ちなみに「ピック病」という名前を聞いたのは、父が脳の血流検査で疑いが出た2017年のことだった。私は当時ピック病のことは知らず、慌ててネットで調べた。認知症の中では4番目に多い病。主に前頭葉、側頭葉前方に委縮が見られる前頭側頭型認知症の約8割は、脳の神経細胞に「Pick球」が見られることでピック病と呼ぶそうだ。

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認知症専門医、長谷川嘉成先生のサイトのピック病のページを拝見すると、その症状としてモラハラ、暴力行為、万引き、痴漢、ゴミ屋敷等々衝撃的な言葉が並ぶ。理性や感情に障害が出るそうで、突然症状が出ることもあるという。他にも意欲減退や無関心、無口、同じ行動を毎日同じ時間に行うなど時刻表的行動、また同じもの、特に甘いものを際限なく食べるなど、多くの症状が書いてある。

うちの父の場合は、認知症の専門医からピック病が7割、アルツハイマーが3割の混じった状態と診断されていた。調べるほどに思いあたることがたくさんあった。激怒しやすくなったし、殴りかかってくることもある。私が捨てたごみを拾い、自室に隠すこともある。ほかにも甘いものを異様に食べるようになっているなど、思い起こせば数年前からその傾向があった。

この病は、まだ原因不明なので効果的な薬もなく、詳しいこともわからないのが頭を抱えるところだ。全国で1万人以上と言われているが、普通の認知症より記憶は保たれるので、高齢になって性格が変わったと思うだけで、家族も気が付かず、発見できる医師も少なく、実際の患者数は現状よりずっと多いとも言われている。

大切なのはそれがその人の「性格」なのではなく、あくまで「病気」なのだということだ。ピック病の理解を進めるために、精神科医の和田秀樹さんが監督をした『「わたし」の人生(みち) わが命のタンゴ』という映画もある。

秋吉久美子演じる主人公の父親を橋爪功が演じている。元大学教授の父が痴漢で逮捕されてわかった認知症……田中さんの父親も元教師だった。