「宇宙」の外に「宇宙」はあるのか…難問への挑戦

宇宙は無数に存在しているかもしれない

水平線の向こうにはなにがあるのか

私は子供の頃、国道を渡るとすぐそこは太平洋という高知県室戸市の海沿いの家に住んでいました。いつだったかはすっかり忘れたものの、毎日見慣れた水平線の向こうにも海がさらに広がっていることを教えてもらい、とても驚いたことだけはよく覚えています。

すでに答えを知っている以上、何を言おうと後出しの理屈になってしまいますが、仮に答えを知らないままであれば、「あの見えない水平線の先は、この海の果てなのか、もしそうならそこには一体どのような風景が広がっているのか」という疑問が沸き起こるのは当然でしょう。

【写真】水平線photo by iStock

もしも果てがあるのなら、そこからはおそらく海水が滝のように流れ落ちているはずだが、それはどこに向かっているのか。逆に、果てがないとするならば、この地球は丸くなくてはいけないのではないか。ちょっと賢い子供ならそんなことまで想像するかもしれません。

我々が住む宇宙についても、全く同じ疑問が存在します。現在「観測できる宇宙」は、宇宙が誕生してから光が届くことのできる138億光年の範囲に限られます。天文学ではこの境界を宇宙のホライズンと呼ぶことがあります(日本語では宇宙の地平線と訳すのが普通ですが、英語では地平線と水平線はいずれもホライズンです)。船や飛行機を使って直接確かめることのできる地球の水平線の向こうとは異なり、宇宙のホライズンの向こうの姿は想像する以外ありません。

これこそが「宇宙の外に宇宙はあるか」という疑問なのですが、そもそもこの文章は変です。最初の「宇宙」と2つめの「宇宙」が同じならば、それは「外」ではないし、もしも本当に「外」にあるものを問いたければ、それは宇宙とは別の単語を用いるべきです。

つまり、より正確には「我々の宇宙の外に別の宇宙はあるか」と問うているのです。でもこれでは面倒くさいので、異なる単語で使い分けるほうがずっとスッキリします。それが、ユニバースと、多数のユニバースの集合にあたるマルチバースという概念であり、拙著『不自然な宇宙』のメインテーマです。ここではそのさわりを紹介します。