昨年末、東京地検特捜部は特別背任罪の容疑で日産前会長、カルロス・ゴーン氏(64)を再逮捕したが、その容疑内容は私を驚かせた。一部の論調が「ゴーン氏擁護」に傾くのは、この犯罪が正確に理解できないためではないか、と私は考えている。
国際金融の世界に住む元経済ヤクザの私は、この事件の本質は「特別背任罪」という経済事件ではなく、もしや「マネーロンダリング」という金融犯罪にあり、特捜部はその線を狙っているのではないか、と考えている。
これが巨大企業の名前と資金をフルに利用し、中東の「大物フィクサー」が差し入れた「信用状」を介した錬金術だとすれば、私自身経験したことのないスケールの大きな話だ。
昨年11月に東京地検特捜部により逮捕されたゴーン氏。刑事事件における逮捕の有効期限は72時間で、最初の拘留期限は10日間。認められればさらに10日間拘留が延長され、起訴できなければ釈放となる。逮捕からの流れを時系列に従って整理すると、年をまたいだ特捜部とゴーン氏側の「72時間+10日間+10日間」を巡る攻防が見えてくるだろう。(11月、12月については2018年)
一連の流れの中で私が注目しているのは、12月21日の再逮捕と、1月15日の保釈申請却下だ。もっとも金証法違反から特別背任への展開は、12月13日公開の『元経済ヤクザが読み解く「日産事件と欧州覇権争いの深い関係」』(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58929)で予想した通り。ただ一つ、大きな見込み違いがあった。記事中で「ゴーン氏が『黒い経済界』について、多少は通じていた可能性をにおわせる」と書いたが、これは低い見積もりだった、ということだ。
予想通りの展開だったとはいえ、12月21日の東京地検特捜部が発表した容疑内容に私は驚いた。これが事実であるなら、日産の名前と巨額資金をフルに利用した構造は、「黒い経済界に多少通じている」レベルではないのではないか。
一方で、この構造を理解できる人間はほとんどいないだろう。ゴーン氏ほどのスケールではないものの、同じ世界に生きた私は適任の解説者であると自負している。
まずは特捜部の発表とその後の報道をもとに、特別背任容疑の内容を整理しよう。
ゴーン氏は新生銀行との間で金融派生商品(通貨取引のスワップ)で個人資産を運用していた。しかし08年9月15日のリーマンショックの影響で約18億5000万円の評価損の損失を出してしまう。これが土台だ。その後の動きを確認しよう。

私にとって最初の疑義は、「評価損を抱えた金融派生商品」が、ゴーン氏→日産→ゴーン氏、と所有者(ポジション)がくるくる変わったことだ。追加担保を求められながら(マージンコール)所有者を移転することは、この金融派生商品では通常不可能とされている。にもかかわらず、日産からゴーン氏に再移転が行われた。
なにより、そもそもマージンコールがなされるならリーマン・ショック後の評価損発生時であるはずなのに、なぜその時にはなされなかったのかも理解できない。
一連の「ウルトラC」が成立するには、新生銀行側がゴーン氏側の説明を承認したとしか考えられない。後述するが、この時、ゴーン氏は「日産」に自己負債を付け替えなければならなかった理由があると、私は考えている。
その上で注目しなければならないのが「信用状」と「ジュファリ氏」の存在だ。ゴーン氏を擁護する一部メディアの論調も見聞するが、それは、この2つの存在の意味を正確に理解していないことが根底にあると私は考えている。