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朝ドラ『まんぷく』松坂慶子演じる「リアルな母」の大切な役割

これぞ、真の「ホームドラマ」だ

NHK朝ドラ『まんぷく』は半分すぎたところで、まだ、即席ラーメンを作り始めていなかった(第14週まで)。

「発明家の妻」が主人公である。夫はいろんなものを発明して、うまくいったり、いかなかったりしている。栄養食品を売って成功し、有名人となったようだ。しかし、その成功はさほど大きく扱われていなかった。ひとつはこれからまだ大きく成功するからだろうし、もうひとつはこれが家庭を舞台にしたドラマだからとおもわれる。

発明家は長谷川博己演じる萬平さんで、その女房が安藤サクラ演じる福子である。

福子が主人公である。彼女は、自分の世界を広げたり、女の独自の生き方を探っているわけではない。常に夫の萬平さんとともにある。夫婦の物語である(萬平&福子の萬・福(まんぷく)でもあるらしい。最初のころにドラマ前に出てくるNHK高瀬アナが驚いたように指摘していた)。

夫婦を描いていて、何だか安心して見られる。

 

「家庭」を描くための配役に見える

萬平さんはすでに三度、捕まっている。戦争中には物資の流用容疑、戦後に手榴弾による反逆容疑、そのあとは脱税容疑で捕まった。何度も牢につながれている。

なかなか厳しい人生である。

萬平さんのその心情をドラマの中心にして、その苦悩をともに過ごすことになったら、視聴者としてはなかなかつらいことになる。罪を犯していないのに捕まって、でも許してもらえないという状況は、その身になってみたら、憤懣やるかたない。あまり朝のドラマに向いていない。

しかしドラマは妻の視点から作られている。

彼を信じて、彼を救い出したいという一心で展開することによって(そして救われることによって)見てる者も安心できる。安心のドラマである。

成功したり失敗したりする発明家の人生を描くのがドラマの目的ではない。

しっかり「家庭」を描くため、わざわざそういう変わった人物を選び出してきたようにもおもえる。

彼の人生は波瀾万丈だが、彼と一緒に住む者にとっては「波瀾万丈の人生を近くで見ている」ということになる。この「近くで見ている」という感覚が、昭和の時代を描きながら、きわめて現代的な仕上がりになっている要素である。

もちろん妻だから、夫の投獄や失敗に巻き込まれ、苦労をともにし、わがことのように心配しつづける。

でもやはり、主人公の身には直接ふりかからない。具体的に言うなら、実際に牢屋には入れられない。面会に行って、語りかけ、励まし、信じることが主人公のやることである。「波瀾万丈人生」に対して、ワンクッションあって、 視聴者に届けられる。みんなで「萬平さんを見守る会」を結成しているようなものだ。

そのために、しっかりとした「家庭」がある。

福子の努力によって家庭がある。愛と信頼によって、「萬平さんが落ち着ける場所」を作っている。

このドラマはすぐれた「ホーム」のドラマなのだ。