編みキノコ(写真はすべて筆者撮影)

「なんで女の子に生まれてこなかったのよ!」と叱られ泣いた私の現在

ジェンダーバイアスを解体するためには

男性が編み物するのは変?

「なんで女の子に生まれてこなかったのよ!」と叱られて、3歳の私は泣いた。

私は編み物作家をしている。

そう、あなたのおばあちゃんやお母さんもされていたかもしれない、あのセーターやらマフラーやらの「編み物」を編んだり教えたりするのが仕事なのだ。

福島県・南相馬をはじめとする被災地で編み物による支援活動など、編み物で社会に関わる活動をするNPO「LIFE KNIT」の代表でもあって、日本国中、いろいろな場所へ行って編み物を教えたり、トークショーをしたりしている。

編み物業界外とコラボレーションすることも多く、高校で講演をしたり、キャンプ用品会社が主催するイベントで編み物を教えるワークショップを開いたりすることもある。

ちなみに、かつて「なんで女の子に生まれてこなかったのよ」と叱ったのは母である。

編み物を教える仕事をしていた母は、1人目が「男の子」だったので、後を継げる「女の子」を切望したのだ。

でも私は残念ながら「男の子」で、出産してから母は不満をずっと口にしていたらしい。

そして、その言葉の意味がおぼろげにわかるようになった3歳の頃、私は泣いたのだ。

日本では「編み物」は女性がやるものだと思われている。

いわゆる「ジェンダーバイアス」が強く染み付いているのだ。

大きな編み物教室の家に生まれ、母も祖母も編み物の先生をしていて、物心つく前から編み物道具と糸で遊んでいた私でも、学生時代は編み物をしなかった。

その頃の私にとって、編み物は「女の人がするもの」であり、その考えをうちやぶってまでやろうとはしなかったのである。

大学時代に、母が「新しい編みかたを試してみてほしい」と糸を持ってくると、楽しかったのでしばらく没頭した。

できあがったマフラーや帽子を身につけていると、知人が興味を持ったので教えることになったが、いざその段になると人目を気にして学食の隅の方でこそこそとする始末だった。

それでも学食で働いている女性職員に見つかり、「男の人が珍しいわね」と言われて赤面した記憶がある。

やはり私にとっても「男が編み物をするのは変」だったのだ。

 

さまざまな場で編んでみる実験

それから20年ほどたった現在、編物業界は「最近は男の人も編み物します」などと喧伝し、NHKの番組に男性編物作家が出演することも少なくないが、いまもって日本で「編物は女性のやること」と思われ続けているのは確かである。

実験してみた私にはよくわかる。

数年前、喫茶店、カフェ、公園、駅、バー、ホテルのロビーなど、さまざまな場を訪れて編んでみたのだ。

どこでも、私が編み物をはじめると、まず空気感がかわる。

駅で編んでいたときは、他のベンチはすべて埋まっているのに、私のならびから誰もいなくなってしまったこともあった。

公園で編みはじめたら、子供連れの母親たちがみんな帰ってしまったこともある。
もちろん、誰かに喋りかけられることなどほとんどない。

たいていの場合、編み物をしはじめると、またたく間に、場の雰囲気が「変な空気」に変わってしまうのだった。

それは編んでいる私も肌でわかるほどで、「編んでいて居心地が悪い感じ」とか「編み物をしていると身体が緊張していく感じ」がした。

最初、それは人目のつくところで「男」である私が編み物をすることに、私自身が気おくれしているのかもしれないな、と思ったりした。

でも、結果から言えばそれだけではなかったのだ。

やはり「男が編み物するのは変」だとその場にいる人たちが思ったからであることは間違いなかったのだ。