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ももクロはなぜ、CDシングル売上数より「ライブ」動員数が多いのか?

「アイドル業界 七不思議」のヒミツ
小島 和宏 プロフィール

常設劇場を持つ資金がないゆえの「苦肉の策」

ももクロのサクセスストーリーは「路上」から始まっている。

代々木公園での路上ライブが彼女たちの原点であり、その場所からNHKホールが見えたことが、のちに紅白歌合戦出場への夢にもつながっていった。

ただ、今こうやって成功しているから「サクセスストーリー」として語られるが、当時はこの路上ライブがのちに「伝説」として語り継がれることになるとは思ってもいなかっただろうし、紅白出場も実現する可能性が限りなくゼロに近い夢想でしかなかった。

 

アイドルグループを立ち上げようとなったとき、スタッフは総出で秋葉原にあるAKB48劇場を視察している。

決して大きな箱ではない。キャパは約250人しかないが、常設会場を持つことはアイドルにとって強みになる。

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毎日、ステージに立つことで経験値は黙っていても上がるし、スキルアップにもつながる。何よりも、まだ売れていない段階から、劇場公演という仕事が毎日創出できるから、メンバーのモチべーションもアップする。

お笑いの世界で吉本興業の芸人の地力が圧倒的なのは、たくさんの常設劇場を所有していて、若手のうちから場数が踏めるからというのは有名な話。

朝から何ステージも踏まされる環境を芸人は過酷ネタとして笑いに変えているが、他事務所に所属している芸人にとっては羨望の対象でしかない。『M‐1グランプリ』などの賞レースでは、確実に場数の差が出てしまう。

それほどまでにタレントにとって、劇場とは重要な場なのだ。

ファンにとっても、毎日決まった時間に決まった場所に行けば必ず公演をやっているというのは、非常に応援がしやすい環境である。

週末の公演を楽しみにするというワクワク感も大切だが、毎日見られるという安心感はもっと大事。人気が出てくるとチケットが取れなくなり、「毎日やっているけれど、 毎日は見られない」というジレンマも発生するが、逆に「あんなに人気のあるアイドルを至近距離で見られる」といったプレミア感がアップする。

当然のことながら、毎日公演を行うことでチケット購入によるゲート収入が発生する。つまり「日銭」が稼げる。休日は2回公演や3回公演も可能なので、収益も単純に2倍、3倍になるのだ。

こんなにいいことずくめなのに常設劇場を持っているアイドルがほとんどいないのは、とにかく金がかかるからだ。

そこそこアクセスのいい場所に箱を押さえるだけでも、都内では至難の業。月々の家賃を考えたら、毎日超満員がつづいたところで大きな収益をあげるのは難しいし、もし、大ブレイクして忙しくなったら、日々の劇場公演を継続できなくなる。

48グルーブは大所帯なので、テレビの生放送に選抜メンバーが出ている同時刻に、アンダーガールズのメンバーが劇場公演に出演することでこのシステムを維持することができるが、少人数のグルーブではそんな離れ業は不可能である。

いいことずくめの裏には、クリアすべき問題が山積していた。

経済的な理由から路上で始まったももクロの歴史。それはのちに壮大なドラマのオープニングとして、伝説と化していく。