Photo by iStock

基礎知識があれば、縄文時代はこんなに楽しくなる

考古学が描く真の縄文のすがた

空前の縄文ブーム! しかし…

2018年の夏は、縄文ブームだった。東京国立博物館で行われた特別展「縄文 1万年の美の鼓動」は35万人もの入館者を集め、これと連動して縄文時代関連の書籍や雑誌が多数刊行されたほか、縄文土器や土偶をモチーフにしたTシャツや文具など、多くの縄文グッズも販売された。

さらには、縄文時代に関わる人々を取り上げた映画『縄文にハマる人々』も公開され、多くの観客を動員した。

また、その少し前から、何かスピリチュアルなもの、アナクロなもの、アンシンメトリカルなもの、エコロジカルなもの、自然志向のもの、そのようなものを形容する言葉として縄文を頭に付けて、「縄文○○」と呼ぶ、現代版「縄文文化」も数多く見られるようになった。

このような動向を、縄文時代・文化が学術的な領域を超えて一般化したものとして喜ぶ向きもある。しかし、そこで語られる縄文時代像の中には、研究者から見て必ずしも考古学的事実に即したものではなく、思わず眉をひそめるようなものもあることは間違いない。

くわえて、今回の縄文ブームは、特定の遺跡の保護活動などとは、ほぼ無縁であったということも、その特徴としてあげることができる。これまでにも、青森県三内丸山遺跡や鹿児島県上野原遺跡といった重要な遺跡の発見時などに、縄文ブームは起こっている。そして、それらのブームは当該遺跡の保存運動とも連動し、埋蔵文化財保護の機運を高めることにも一役買ってきた。

しかしながら、今回の縄文ブームには、そのような動向はほとんど見られなかった。縄文を面白いものとして、「遊び心」を満たすためのツールとして利用している傾向が強く、様々な媒体に登場する縄文時代・文化に対する理解も、都合の良い部分のみがピックアップされた、表層的なものにとどまるものが多かった。

その一方で、関東近県では、縄文ブームの最中に、学術的にも重要な意義を持った遺跡が、一度も外部に情報公開されることなく、開発のために破壊・消滅させられるという「事件」が起きていたことは、ほとんど知られていない。今回の縄文ブームは、遺跡の保存に対して何の効果もなかったことは記憶しておいてよいだろう。