Photo by iStock

英国「EU離脱危機」が、日本の消費増税を吹き飛ばす可能性

米中貿易戦争とのダブルパンチで…

「合意なき離脱」へ進む英国

安倍晋三政権が10月に予定している消費税の引き上げに、また1つ新たなハードルが加わりそうだ。英国のメイ首相が提案した欧州連合(EU)離脱案を議会下院は1月16日、大差で否決した。世界経済に漂う不透明感は一段と濃くなっている。

英下院はメイ首相の提案を賛成202票、反対432票の圧倒的大差で否決した。英BBC放送によれば、下院史上でもっとも大差による政府案否決という。メイ首相は修正した離脱案を示す構えだが、議会が同意せず「合意なき離脱」になる可能性も強まっている。

メイ首相は、EUと再協議して1月21日までに新たな離脱案を議会に提示する方針だ。とはいえ、わずか数日間でEUと議会の双方が納得する案をまとめるのは難しいのではないか。

 

なぜかといえば、メイ首相が提案したのは、いわば「一時しのぎの先送り案」だった。これまでの交渉でメイ首相とEU、それに議会のすべてが合意できそうな案が見つからなかったからこそ先送りを提案したのに、それさえも否決されてしまったからだ。どういうことか。

話が込み入っていて、少しややこしいが、できるだけ分かりやすく説明しよう。

最大の焦点は、英国の一部である北アイルランドの取り扱いだった。英国とEUはすでに、英国の一部である北アイルランドと独立国であるアイルランドの間に「物理的な国境は作らない」ことで合意している。北アイルランド紛争の再燃を恐れたからだ。

カトリック教徒が中心のアイルランドとプロテスタント系が多い北アイルランド、それに英国は1980年代まで、血を血で洗う武力闘争を繰り広げた。とりわけ、アイルランド共和国軍(IRA)と英国特殊部隊の壮絶な戦いは映画や小説にもなっている。

合わせて3000人もの死者を出した末、英国とアイルランドは1998年、アイルランドのベルファストで合意を結び、ようやく和平に向けて決着した。

さて、現在はアイルランドも英国もEU加盟国なので、アイルランドと北アイルランドは、人やモノが自由に行き来できる。ところが、英国がEUを離脱するなら、双方で関税が発生し、貿易面に限ってみても国境での通関手続きが必要になる。

普通なら国境に検問所と通関施設を設置して、チェックすればいいのだが、話はそう簡単にいかない。北アイルランド(英国の一部)とアイルランドの間に検問所を設けると、双方にかつての対立を思い出させてしまう懸念があるからだ。

両国はカトリックとプロテスタントで宗教が違うので、もともと対立意識が強い。それで、英国もEUも「検問所の設置が紛争を再燃させかねない」と心配した。それが「物理的な国境(すなわち検問所)は作らない」という合意を導いた。

そうは言っても、英国がEUを離脱するなら、英国の一部である北アイルランドとEU加盟国であるアイルランドの国境措置をどうするか、という本質的な問題は残ってしまう。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら