# 虐待 # 児童養護施設 # 育児放棄

元児童相談所職員が明かす「虐待を受けた子と親の再統合の難しさ」

育てられない母親たち㉗
石井 光太 プロフィール

ネグレクトされても「帰りたい」

では、子供たちは自分を捨てた親についてどんな思いを抱いているのだろうか。梶尾の言葉である。

「子供にとって親への思いは格別です。高校生くらいで家を出た子ならともかく、幼児や小学生くらいの時に施設に来た子は、家庭で親と一緒に暮らしたいという思いを抱いています。ただ、理想と現実とはちがって、親が精神疾患を抱えていてとても子育てができる状況でなかったり、親が音信不通だったりすれば、当然そうはいきません。

それゆえ、私たち施設と児童相談所とで、きちんと子供に向かって『なぜ帰れないのか』の理由をつたえます。その子のライフストーリーを年齢に合わせて定期的に説明し、納得してくれないかもしれないけど、今は仕方がないくらいに考えてもらうのです。きちんと説明すれば、子供たちは『捨てられた』のではなく、『事情があってこうなっているんだ』と考えるようになります」

〔PHOTO〕iStock

施設から自宅に帰ることのできる子供は、一年に一人いるかどうか。逆に言えば、それくらい親に育児の意志や能力がないのだ。帰すことができない理由は次のようなものだ。

・親が精神疾患をかかえている
・暴力がひどい
・親に連絡がとれない
・ゴミ屋敷のまま
・親が子供からお金を奪い取る

親が精神疾患や知的障害を抱えていたり、アルコールや薬物の依存症で真っ当な話し合いができない場合は、帰すことはあきらめなければならない。

 

しかし、子供たちの「帰りたい」という願いは思いのほか大きい。

幼い頃は純粋に親に会いたいという気持ちが膨らむのだが、思春期になると別の理由が加わってくる。たとえば、「外泊ができないから施設は不自由」「スマホがほしい(この施設では高校生以上が自分のバイト代で買うのが条件)」「服や化粧品がほしい」と考えるようになるのだ。

「家庭に帰ったからといって自由になったり、携帯や服が買えるわけじゃありません。でも、何カ月に一度親が面会に来てプレゼントをもらったりすると、『親はやさしい人なんじゃないか』とか『経済力があるんじゃないか』と思って家へ帰りたがる。

特に何年も家に帰っていなくて、ごくまれに母親が面会に来て調子のいいことを言われたりすると、そう勘違いしてしまうんです。もっとも施設から家に帰ったところで、またひどい虐待を受けたり、アルバイト代をむしり取られたりして、再び施設にもどってくることになったりするんですが」

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