# 格差・貧困 # 虐待 # 育児放棄

元児童相談所職員が明かす「虐待を受けた子と親の再統合の難しさ」

育てられない母親たち㉗
石井 光太 プロフィール

「私なりに一生懸命育児をしていた」

こういう親は、児童相談所に子供を保護された際、自分はしっかりと育児をしているつもりだったと主張することが大半だ。私も拙著『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』の取材で、子供を殺害した親たちが一様に「子供を愛していました」と言っていることを明らかにしたが、それと同じようなことが当てはまるのだ。

家をゴミ屋敷にしていても何も思わない。子育てに手を焼けば、感情的になって手を上げる。新しい男に出会ったら、子供の存在を忘れて何日も家にもどってこない。
にもかかわらず、彼女たちには虐待をしているという認識はない。梶尾が面会で聞くと、大抵の親は「私なりに一生懸命育児をしていた」「なんでこうなったのかわからない」と答えるという。

〔PHOTO〕iStock

彼女たちのその場限りの言動は、日常生活の中でも見て取れる。子供を施設に預けているという意識に乏しく、現在、梶原の施設にいる50名以上の児童のうち、連絡が取れる親は3割程度。つまり、7割の親が音信不通か、連絡をしたところでちゃんと応じない状態なのである(ちなみに、実親が両方そろっている子供は一人もいない)。

梶尾は語る。

「親には、自覚や責任感はありませんね。生活への意識にも乏しいです。自分のことで精一杯だったり、恋愛なんかに夢中で子供に目が向かない。だから、水商売で異性と出会ったらすぐ同棲をはじめる、仕事で人とぶつかれば失踪する、携帯電話を変えても施設に教える必要があると思わない。それで連絡が取れなくなってしまうんです。

なぜ彼女たちがそういう性格になったのかといえば、障害や病気がその要因となっているケースもあれば、親自身が虐待を受けて愛着障害などがあることから、そうした人格になっているケースもあります」

こういう親を持つと、子供は慢性的なネグレクトの状態に置かれ、人に向き合ってもらったという経験を得ることができない。これが、子供たちにさらに生きづらさを与えるという。

 

虐待された子の特徴

一般的に子供は、親をはじめとした養育者との関係によって世の中への信頼感を構築していく。泣けばオムツを交換してくれる、病気になれば介抱してくれる、しゃべれば喜んでくれるといった体験を重ねることで、他人を信頼することを学び、自分に自信をもって社会へと巣立っていくことができるようになるのだ。

ところが、ネグレクト下に置かれた子供は、他人を信用したり、自分に自信を持ったり、社会への希望を抱いたりすることができないまま成長していく。泣いても無視されれば人を信頼することはできない。しゃべっても黙れと言われればしゃべれなくなる。正しいことを言っても殴られれば意見を持たなくなる。言い方は悪いかもしれないが、根っこがない人間に育ってしまうのだ。

虐待を受けた子供たちが学校や社会で自立して生きていけないのは、こうしたところに要因がある。

大きくなっても友人をつくろうとしないでゲームの世界だけにのめり込む、仕事をはじめても一言注意されれば自分が全否定されたと思って辞めてしまう、社会に対して絶望しているので、生活保護のお金でお酒を飲みつづける生活をしてもなんとも思わない。

三つ子の魂百までというが、虐待された子供が大人になって困難な人生を歩むようになるのは、こうしたことが一因としてあるのだ。

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