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元児童相談所職員が明かす「虐待を受けた子と親の再統合の難しさ」

育てられない母親たち㉗
児童相談所に対する通報件数が年間13万件を超える一方で、児童福祉の世界には「親と子供が一緒に暮らすにこしたことはない」という考え方がある。
虐待があって引き離したとしても、なるべくは親子の関係性を修復させて同じ家に住まわせた方がいい。引き離す側の児童相談所にも、擁護する側の児童養護施設にも、そういう前提がある。

ただし、虐待をする親も、虐待を受けて育った子供も、複雑な問題をかかえていることが多く、家族の「再統合」は決してたやすいことではない。

再統合の現場には、どのような現実があるのか。

元児童相談所の職員であり、現在は児童養護施設で心理士として働く梶尾美知子に話を聞いた(児童のプライベートにかかわる内容があるため、固有名詞はすべて匿名にする)。
 

「大舎制」施設に入る子供のほぼ100%が「被虐待」

家庭に虐待があった場合、安全を守るために子供を引き離すのは、児童相談所の役割だ。

児童相談所は被虐待児童を一時保護所に預け、短期間では問題を改善できないと判断すれば、児童を乳児院(2歳くらいまで)、あるいは児童養護施設(3歳から18歳くらい)へ送ることになる。

かつて児童養護施設は「大舎制」といって数十人が暮らせる大きな建物がメインだったが、近年は六人以下で暮らす小規模の施設を推進している。小規模の方がより子供たちが家族に近い環境をつくれるというのが理由だ。

〔PHOTO〕iStock

ただ、大舎制の施設の職員によれば、かならずしもいい面だけではないという。小規模の場合は精神疾患や発達障害があって人とうまくやっていけない子供は馴染みにくかったり、卒園後も「実家」として気軽に施設に遊びに来られる雰囲気が乏しかったりするのだ。

梶尾によれば、現在つとめている大舎制の児童養護施設に入ってくる子供はほぼ100パーセントの率で被虐待の子供だという。

「ほとんどの子供たちがネグレクト(育児放棄)をベースに、身体的暴力、性的暴力を受けてきた子です。虐待が判明する経緯は様々ですね。ゴミ屋敷に住んでいて不潔にしていることから学校の先生が気がつく、学校の検診で虫歯の放置や傷を医師が見つける、深夜徘徊をしていたところを警察が補導したりしてわかる……。

中学生、高校生の場合は、何年も虐待に耐えてきたものの、学費を払ってくれないとか、いなくなったという事態が起こってやむなく公的機関に相談したところ、虐待が判明するというケースがあります」

 

親は単に性格が粗暴だから虐待をするわけではない。この連載で見てきたように、親自身が虐待家庭に育った上、発達障害、知的障害、精神疾患などを併発し、さらに支援者のいない状態で貧困に追い詰められて物事を客観的にみられなくなっているようなケースが多いのだ。