足立区に逆転はあるか? 鉄道整備と沿線開発の歴史から考える

まちの衰退を防ぐ2つのポイント
池田 利道 プロフィール

足立区はこのまま衰退するのか

では、なぜいま足立を取り上げようとするのか。それは大きな課題を抱えているからこそ、未来に向けた可能性を期待できるからにほかならない。

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東京のまちは、渦巻きのように発展、低迷、再発展を繰り返してきた。東京がいまわが国の多くの地方都市がさらされているような低迷から衰退への道を進まなかったのは、人口が増え、活力が維持できる仕組みを内在させていたからにほかならない。

住みたいまち選びのトレンドの先端にある都心も、四半世紀前までは都市のドーナツ化によって半端ではない人口の減少が続いていた。都心の人口が一転増加に向かうようになった背景には、1997年に建築基準法が改正され、タワーマンションの建設が容易になったからだといわれている。

なるほどそれも理由のひとつではあるが、1980年代以降中央区が試行錯誤を続けた人口回復を目指す取り組みが、都心ライフの見直しという花を咲かせたことを忘れてはならない。

さらに今世紀に入ると、六本木ヒルズをはじめレジデンシャル機能を併設した大規模なタウン型再開発が港区で相次ぎ、都心ライフの評価を一気に引き上げることになる。「ヒルズ族」という言葉はまだ記憶に新しいだろう。

 

50年前の世界からタイムスリップしてきた人がいたなら、いまの東京都心を見て目を回すに違いない。筆者にしても、学生時代には「都心は本来人が住むところではない」と教わった。

だが、これからはかつてのように、東京にある限りいつか逆転打を放つことができるという甘い考えは許されなくなった。わが国全体を襲う少子高齢化から人口減少への荒波に、やがて東京も正面から向き合っていかざるを得ないからだ。消滅はないにしても、低迷から衰退をたどることは十分に考えられる。東京も否応なくまちが存続を競い合う時代を迎えようとしている。

競争に勝ち残るためのポイントは2つ。第一に、自分たちの置かれている実態を正しく把握し、理解すること。そして第二に、的を絞って突破口を開いていく都市経営の戦略性を磨くこと。その意味で、筆者の足立評価は高い。区政はもとより、区民を巻き込んだ動きの広がりを実感できるからだ。

「足立に住めたら、どこにでも住める」。バラエティ番組の茶化したコピーの向こうを張るなら、「足立がわかれば、未来がわかる」。足立にそそぐ熱い視線が、いま密かに高まり出している。