米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board=FRB)が金利を上げて金融政策を正常化している。
しかし、金利を上げると景気に対してはマイナスの影響があるため、政治家であるトランプ大統領が圧力をかけた。株式の下落もあり、パウエル議長も「利上げの停止」を示唆している。
実はその影響を最も受けるのは今後、金融政策を「正常化」しよう(金利を上げよう)とする日本銀行なのである。先日、筆者はワシントンのFRB本部を訪問したので、最新の事情も交え解説したい。
国際金融論といわれる分野では、専門家でも“誤解”しているような裏の“握り”が多い。その一つに「中央銀行」の説明がある。
一般に経済政策においては、財政政策は財務省、金融政策は中央銀行が司るとされている。その中央銀行の真の目的は基本的には「物価の安定」とされている。先進国の物価上昇率の目標は“裏”で共通の目標となっており、どの国でも「2%」となっている。
そして、金融政策の目的は、金利を下げることではなくて、次の経済危機に備えるために正常時に金利を上げておくことであり、「正常化」と言った場合、そのことを指す。
しかし、個々の先進国の中央銀行の役割をみると、教科書では同じように書いてあるものの、それぞれに違いがある。物価の安定だけではないのである。
欧州中央銀行(ECB)では、歴史的にインフレがナチスの台頭を促し、第2次世界大戦が発生したこともあり、その“2%のみ”が目標となっており、法律にも明記されている。
それに対し、米国では、大恐慌、なかでも、そのとき25%にも上った失業率が経済のトラウマとして残っている。そのため米連邦準備制度では物価の安定の他に「雇用の最大化」も目標となっている。例えば前FRB議長のイエレンは労働市場の専門家であった。
この制度のため、政府の責任である景気対策の影響を受けやすくなっている。実際、金利の変更は物価よりも雇用によることの方が多い。
ちなみに日本の日本銀行は日本銀行法で独立性が確保されているが、「政府の経済政策との整合性の確保」として“半身”、政府の影響を構造的に受けている。