手を出してはいけない「がん未承認治療」の見分け方、教えます

高額な治療ほど危険だとご存じですか?
大須賀 覚 プロフィール

そして比較的期待できる「先進医療」

日本では「先進医療」というシステムがあります。これは比較的高額な費用負担を求めるものなのですが、巷のイカサマ治療とは異なるもので、分けて考えないといけません。

これは厚生労働大臣が先端的な医療技術であると承認したものに対して適用する、特例的な制度です。一定の有効性や安全性が確認されていても、保険適用まで至っていない医療を、審査のもと承認して、それらには患者から費用請求をして治療を行っても良い、とするシステムになっています。陽子線治療や重粒子治療などが含まれたりしています。

これらにはPhase3などの段階に進行しているものも含まれます。やがて正式に保険適応になるものもあります。そのため、先進医療は開発段階の後半にある治療と考えてください。

ただ、確率が高いというだけで、確実な治療効果が証明されているわけではないことと、標準治療に比べて高額な治療費がかかるという現実があります。実際に治療を受けるかどうかは、専門の先生とよくご相談ください。

過度の期待をしてはいけない

一般の方は、未承認治療にはかなり期待できるものが含まれていると思っています。しかし、実情は大変に厳しいものです。

がんの新薬開発は大変な作業ですので、かなり最終段階にある治療でないと大きな期待はできません。確率がゼロではないので、必ずやるべきではないとは言い切れませんが、その治療を選択する場合には、どの程度の期待ができるのか、その期待は自分が思い描いているものと同程度であるのか、よく考慮してからにしてください。

未承認治療の宣伝の内容を良く確認してください。細胞実験やマウス実験レベルで効いたという根拠データは、良いどころか、ダメである印ともいえます。ほんの数人で効いたというようなデータもほとんど意味がありません。

売っている当事者の自己主張である場合、信憑性がどうなのかという問題もあります。たとえ、しっかりとした臨床研究で第三者に確認されたデータだとしても、第2~3段階にある治療ですので、それが効果を示す確率は5%前後と、大変に厳しい確率です。

第4段階の試験のような数百人規模で検討したデータがないと、確率が高い段階にあるとはいえないのです。

未承認治療「だけ」は大変に危険

今回の解説で理解できたかと思いますが、未承認治療の中に確実に効果があるものが含まれる可能性はとても低いです。そのため、標準治療を行わずに、未承認治療のみを行うというのはとんでもない賭けになってしまいます。

最初の第1段階にある未承認治療のみを行うということになると、それで効果を示す確率は0.1%以下になってしまいます。

ちゃんと標準治療をベースにして治療をすすめることが重要です。製薬会社が行っている第4段階の臨床試験ですら、標準治療を行わない群を作ることはほとんどありません。「標準治療」と「標準治療+新治療」の群を作って比較します。

新治療の成功確率は100%からはほど遠いからです。

どの段階なのか、冷静に見きわめよう

ここまで、がんに対する未承認治療について解説しました。

がんはとても難しい病気です。多数の治療が開発され検討されていますが、有効性が確認されるのは、ほんの一部の治療のみです。そのため、基本的な考え方としては、病院で行われている有効性がすでに確認された標準治療(保険適応される治療)を行いましょう。それが確実です。

標準治療を行った上で、他にもできる治療がないかを探して、未承認治療も試したいという際には、今回の解説を参考にしてもらいたいと思います。

未承認治療にはさまざまな開発段階のものが含まれています。その未承認治療がどの段階にあるのかによって、どの程度効果を期待できるのかが変わります。

第1段階の細胞レベル・マウスレベルの実験データしかないのはほとんど期待できません。また、先進医療以外の、高額な費用負担を要求する治療は、効果が期待できる段階でないものがほとんどです。

できる限りの治療をしたいと思い、未承認治療を選択することも一つの手段ではあります。しかし、何でも良いというわけではありません。

開発段階のできるだけ後半にある臨床研究に参加することを第一候補にして考えてもらいたいと思います。それが最も効果を得られる可能性が高く、余計な費用負担もなく受けられます。

「どの段階にあるのか」「効果を期待できるのか」「どのような副作用があるのか」を冷静に検討して、専門の医師とも良く相談をされて、治療選択をしてもらいたいと思います。

がん治療で悩むあなたに贈る言葉 米国在住がん研究者のブログ」より