高橋朱里が『PRODUCE 48』で痛感した「日本と韓国の違い」

最終回の心境、そして将来について
松谷 創一郎 プロフィール

K-POPの当たり前が日本でできるか

インタビューをしていて強く感じたのは、21歳になったばかりの女性が、韓国での体験を経て能力的にも精神的にも大きく成長したことだった。

番組を観ていてもそれは感じられたが、「自分は自分を認めよう」と話す高橋朱里には、96年のアトランタ五輪女子マラソンで銅メダルを獲得し「自分で自分のことを褒めたい」と話した有森裕子の姿が重なった。

それは、自分の限界まで努力し、力をすべて出し切った上で達した境地なのだろう。

そうした高橋の経験は、おそらくすでにAKB48で伝播しつつあるはずだ。彼女が直接なにかを伝えなくても、その姿勢から周囲が学ぶことは多いだろう。こうした影響は、すぐに目に見えるかたちで現れることはないが、じわじわと周囲に波及する。

ただ、今後より注目されるのは、そんな高橋を周囲がどのように扱うかだ。彼女が韓国で得たものを全力で発揮できる場は、現状のAKB48にはない。グループのデザインも、楽曲もダンス(振り付け)もドメスティックな粋を出ることはないからだ。

一方、高橋とともに最後の20人に残った竹内美宥は、番組終了直後にAKB48からの卒業を発表した。卒業後は、韓国での活動を視野に入れているのではないかと見られている。

そもそも、秋元康が現状のAKB48グループに満足していたならば、この企画に参加することはなかったはずだ。現状に変化をうながし、同時に48グループの韓国展開の足がかりにすることが目的だったはずだ。

よって、高橋だけでなく、宮崎美穂や白間美瑠、下尾みうなどの最終候補者、さらに村瀬紗英や後藤萌咲、千葉恵里、村川緋杏、中西智代梨、山田野絵など、韓国での経験で大きく成長が見られたメンバーにどのような場を準備するかが今後は求められる。

 

ひとつ提案をするならば、ダンスや歌の実力を基準とし、海外展開も想定した新たなグループの誕生が望ましい。

言うなれば、AKB48グループ全体の精鋭チームだ。他グループとの兼任もなく、握手会もほどほどに、ダンスと歌を入念に磨いて曲とパフォーマンスに特化するようなイメージだ。

『PRODUCE 48』で高橋が吸収し、K-POPが当たり前のようにやっていることを、日本でもやるのである。

もちろんその際は、従来の48グループとはかなり体制が異なってくるはずだ。トレーナーを常駐させ、楽曲もダンスもミュージックビデオもグローバル基準で入念に制作しなければならない。

高橋が持ち帰ってきたものを発揮するためには、従来の環境自体を変えていくことが必要とされる。

高橋朱里は、最後に「まだ諦めてない」と語った。

秋元康をはじめとする周囲が、どれほど彼女の言葉を真剣に受け止められるか。それによって今後の状況──AKB48だけでなく、J-POPの将来も大きく左右されるはずだ。