中学生が総合学習で「卒業論文」を書いて学ぶ、苦しみと楽しさ

ある進学校のユニークな試み
大学入試改革の影響もあって、中学、高校で論文学習を取り入れる学校が増えている。論文を書く中高生にとって、もっとも苦労するのが、テーマ選び。今月刊行された『中高生からの論文入門』(講談社現代新書)の著者のひとり、片岡則夫さんは、自らの授業で、テーマ選びのヒントになればと「新書によるおためし読書」の授業をおこなった。相手は中学2年生。小説好きな生徒はいても、新書というジャンル自体を知らない生徒がほとんど。彼らは新書をどう読んだのか――。

「総合的な学習の時間」で卒業論文を

大阪府南部の河内長野市にある清教学園中・高等学校は、キリスト教主義の進学校だ。もとはといえば理科の教師だった私が、気づけば探究学習と図書館に魅せられて、研究論文や調べ学習の授業を長く続けている。現在の肩書は探究科教諭・学校図書館リブラリア館長だ。

卒業論文の授業を中学2~3年生で持っている。「忙しい中学生に卒業論文など書くひまなどあるのだろうか? 中学校でそんな授業ができるのか?」そう思われる向きもあろう。じつはこの授業を展開する「総合的な学習の時間」は、「自分でテーマを決めて学び、自分の生き方を考えなさい」という、とても懐が深い時間なので、卒業論文もできるのである。

ちなみに、学習指導要領では、この時間の目標が次のように示されている。

「横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに、学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的、協同的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにする」。

なにかしら教科書がある一般の教科とは違い、こうした目標が示されるだけで、具体的な内容は学校ごとに決められる。そこで本校では、卒業論文を例年課題にできる、というわけである。 

とはいえ、学生時代に卒業論文を書かれた方ならおわかりだろう。とにかくテーマの設定が難物だ。中学生ならなおさらである。「テーマを決めよう」と言ったところで、すぐ研究をはじめられる生徒は少ない。反対に「興味のあることなんてないよ」そう言ってはばからない生徒も珍しくない。

そのようなわけで、卒業論文のはじまりは、関心のある事柄を書き出し、あれこれ悩むテーマ探しの授業が中心になる。そこでヒントになればと、実施したのが、今回紹介する「新書によるおためし読書」である。「おためし読書」とは、もともとは子どもと本との出合いのために工夫された、清教学園オリジナルの授業方法だ。いつもは中1で実施しているが、今年度は卒業論文を迎える中2の生徒たちにも、新書に限った「おためし読書」体験をしてもらった。

 

6万冊の蔵書から475冊をセレクト

「新書によるおためし読書」といっても、中学生の頭にはまだ「新書」という概念がない。そこで、なにはともあれ、さまざまな新書をぶつけてみることになる。

まずは、学校図書館6万冊の蔵書の中から、中学2年生でも読めそうで、しかも興味を持ってくれそうなタイトルの新書を集める。買い物かごを持って、分類順に本棚を回るのである。こうして用意した新書は総数475冊。集めた本はスタッフの学校司書にバーコードを読み取ってもらい、データ化した。

「新書によるおためし読書」の準備。スタッフがデータの入力をしてくれている。

次に図書館に隣接した総合学習室の机上に、新書を10冊ずつ並べる。そのとき、分類番号の近い本を入れないよう注意する。たとえば、あるセットに理系の本ばかりが集まらないよう、内容をわざとばらしたのである。というのも、なるべく多様な知識・新書を生徒には差し出したいからだ。

教室にセッティングされた新書。分野をばらして各机に10冊を配置。出版社もさまざま。