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メガネは「ある理由」から、人が恐れる「悪魔の道具」になった

せっかく便利な発明だったのに…

神の意思に背いている

日本人の約半数(約6000万人)は近視といわれ、先進国の中でも有数の近視大国だ。さらに、メガネを使う人は約7000万人を超え、多くの人にとって必需品となっている。

メガネが日本に伝来したのは16世紀だ。イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルが来日し、周防(現在の山口県)の大名・大内義隆に贈ったものが広まって、全国の諸大名に使われはじめた。

そもそもメガネは、13世紀後半のイタリアで発明されたといわれている。グラスなどの工芸品で知られる、ガラスの製造技術が発達していたベニス地方で作られていた。

それ以前は、老眼になって字が見えにくくなった学者は若い奴隷に本を読ませたり、石英や水晶でできた半球型のレンズを本の上に直接のせて読んだりしていたのだから、画期的な発明だった。

しかし、メガネが登場してからも、しばらく使われていなかったことをご存じだろうか。かつてメガネは、悪魔の道具だと考えられていたのだ。

 

中世の西欧諸国は価値観のすべてに宗教が根ざしていた。17世紀にガリレオ・ガリレイが、天動説を否定し地動説を支持したことで宗教裁判にかけられた話は有名だ。

メガネも同じように、「人間が神から授かった目の能力に異議を申し立て、神の意思に背いて視力を回復する悪魔の道具」と考えられていた。

ただ、そういった考えは、15世紀に活版印刷術が発明されると廃れてしまう。

教会は、キリスト教を広めるために、聖書を印刷して人々に読ませようとしていた。目が悪い人にも布教するためには、メガネが必要だった。

それでも、気軽に使いにくい風習もあった。メガネをかけるということは、勤勉博学であるという印象を与えるものだったので、そのことをひけらかさないように、目上の人の前では取る習慣があったのだ。

こうした紆余曲折を経て、メガネは普及した。いまや、レーシック手術をして視力を上げる人もいる。当時の西欧人が知ったら、卒倒してしまうだろう。(水)

『週刊現代』2019年2月2日号より