英語入試改革に小学校英語…なぜ成果が見込めないのに断行されるのか

これは「お金をケチった改革ごっこ」だ
寺沢 拓敬 プロフィール

文科省がコスト削減したツケは、受験生が払う

より深刻な問題が、図の因果連鎖はあくまで机上の論理に過ぎないという点である。「入試改革 → 英語指導が変化 → 生徒の英語力向上」を明らかにした実証研究は存在しない

たとえば、約10年前にセンター試験にリスニング試験が導入されたが、導入がリスニング能力を向上させたという研究結果は得られていない(ただし、高校英語教育の目標に試験内容を合致させたという点での意義はあったと思う)。

では、どのような英語教育改革なら効果が見込めるのだろうか。 「風が吹けば桶屋が儲かる」式ではなく、直接的に影響力を及ぼす部分にリソースを投入すればよい

たとえば、四技能指導をしやすくするために教員定数を増やしてクラスサイズを縮小する。四技能指導への知見を深めてもらうため、教員に長期研修の機会を与える。教職員増員および一人当り仕事量の減少により、新たな指導法に挑戦するための時間的・精神的余裕を作り出す。

これらは正攻法ではあり、しかも効果も見込めるものだが、いずれも莫大な予算が必要である。 逆に言えば、文科省は民間試験導入という比較的安上がりな方法でお茶を濁したわけである。 そして、政府がコストをかけることを渋ったツケは民間テストの受験料として受験生の肩にのしかかった

2021年からセンター試験の英語にスピーキングなどが導入される〔PHOTO〕iStock

小学校英語は「現場に丸投げ」で教員の負担が激増

予算をつけずに改革を断行する点は、小学校英語についても言える。

近年、小学校英語が大きな話題になっていることは周知のとおりだが、具体的な導入形態をご存知だろうか。 大々的にリソースをつぎ込んだ大改革が実行されていると思っている人もいそうだが、実際には、かなり安上がりな導入方法でお茶を濁している。

現在行われている、そして2020年から教科化・早期化される公立小学校での英語教育において、主たる授業担当者は学級担任である。 つまり、既にいる教員に新たな科目を指導させる形である。 英語を専門にする教員(専科教員)を新たに雇って各校に配置するわけではない。

 

今までは英語を教えてこなかった小学校教員に、新たに英語を教えさせることにした以上、相応のコストは不可避である。 具体的には、国・自治体が教員に研修を提供する際に必要な費用、教員が自己研修に割く費用・時間、そして授業準備にかける時間である。

しかしながら、こうしたコストが財政的に解決されているわけではない。それゆえ、実効性が疑われるような奇妙な研修が導入されたり、現場の教員に過剰な負担が求められたりしている

第一に、教員研修への気軽な参加を可能にするだけの財政的バックアップはない。この点は、伝言ゲームとも形容できる奇妙な研修方法を見るとよくわかる。 小学校英語の研修では、まず各都道府県等が推薦した計数百人程度のリーダー教員を中央に集めて研修を行う。

次に、このリーダーが地域に戻り、各小学校の中核教員に研修を施す。そして、中核教員が小学校に戻り、同僚教員に校内研修を行う。 文科省からすれば、コストが抑えられる妙案だろうが、このような伝言ゲームで研修効果があるのかは甚だ疑問である。 また、各校の教員からすれば、新たな研修参加のために時間が確保されたわけではなく、既存の業務に上乗せされた形である。

〔出典〕文部科学省『小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック』
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