大ブーイングのなか、JOC竹田会長が7分で会見を打ち切った理由

捜査の行方とともに読み解く

当初は「疑惑なし」だったが…

「『しょせんフランスの話で、日本にまで捜査権限は及ばない』と、舐めてかからない方がいい」

私が本サイトでこう締めくくったのは、2016年5月19日配信の「汚れた東京五輪『疑惑の構図』と捜査の可能性」と、題する記事である。

当時、仏検察当局が、五輪招致に絡んで捜査を行っていた。日本の東京五輪招致委員会(竹田恒和理事長)が、シンガポールのコンサルタント会社に280万シンガポールドル(約2億2000万円)でロビー活動などを依頼。そこが、国際オリンピック委員会(IOC)の実力者に賄賂を贈った疑いである。

メディアが大きく取り上げ、国会に日本オリンピック委員会(JOC)会長でもある竹田氏が呼ばれるなど騒動になったが、「疑惑」にとどまった。

JOCは「調査委員会」を立ち上げたものの、しょせんは身内調査である。同年8月30日には「違法性はなかった」という結論を出し、捜査共助要請を受けた東京地検特捜部は、17年2月、竹田氏などから聴取を行ったものの、「意見なし」と結論を出した。疑惑はなかったというに等しい。

 

だが、仏司法当局は諦めてなかった。検察当局は起訴に向けた捜査をコツコツと続け、昨年12月、本格捜査に着手した。起訴に向けて予審判事が捜査を開始、12月10日、竹田氏を仏に呼び、事情聴取を行ったのである。こうなった場合の起訴率は8割近くとなり、容疑は深まったというべきだろう。

しかし、1月11日、本格捜査が仏ル・モンド紙で報じられ騒動になってからも、竹田氏の危機感は薄かった。「(連休開けの)15日に記者会見します」と、述べたのは、2年半前と同様、「メディア側が攻撃材料を持っているわけではなく、否定すればそれで済む」と、思っていたからだろう。

だが、仏司法当局の前向きな姿勢は、予審判事を動かすほどの新材料があったと読むこともできた。そのため、竹田氏サイドは会見前日の深夜、「質疑応答なし」を決めたという。相手に手の内を見せず、言質を与えてはならないという弁護士のアドバイスだろう。

それが15日午前11時からの7分間会見の真相である。「質問に答えてくださいよ!」と、迫る声を無視して逃走。内外のメディアに醜態をさらした。

前回の成功体験が竹田氏の目を曇らせた。ただ、そう思わせてしまうほど、捜査が竹田氏に行き着くまでに、幾重にもカベが張り巡らされているのは事実だ。

事件の背後には、83年の第一回世界陸上競技選手権、84年のロサンゼルスオリンピックなどから急速に巨大化するスポーツビジネスという現実がある。

数々の利権が発生する招致には莫大なカネが動くようになり、国際陸上競技連盟(IAAF)、IOC、国際サッカー連盟(FIFA)を仕切るような大物には各種工作が仕掛けられるようになった。

東京五輪に絡んで招致委が依頼したコンサルタントはブラック・タイディングス(BT)のイアン・タン氏であり、工作対象者はIOCのアフリカ票に影響力のあるラミン・ディアクIAAF前会長である。

疑惑は、限りなく黒かった。ディアク氏は、ロシアドーピング疑惑に絡み、100万ユーロ(約1億3000万円)の収賄と資金洗浄で、仏司法当局に逮捕されている。その工作の過程で使われた口座が、タン氏のBT口座で、タン氏はディアク氏の息子のパパ・マッサタ・ディアク氏と親しかった。

仏司法当局の“見立て”は、BT社とタン氏はディアク父子のダミーで、日本からのコンサルタント料は父子への賄賂として使われた、というものだ。

 

しかし、その証明は難しい。

まず、パパ・マッサタ氏は、疑惑発覚後、国際指名手配をかけられ母国のセネガルに逃げ帰った。国際刑事警察機構(ICPO)の聴取要請にも応じず、セネガルが保護している。

タン氏の動向を探るのも容易ではない。シンガポールの所在地は、今は閉鎖された古びた住宅棟で、ペーパーカンパニーを実証するもの。いろんなメディアが接触を試みているものの、成功した社はなく、調査委員会も周辺を聞き回っただけ。なにより2億2000万円を支払いながら、招致委事務局は本人と会うことなく電話会議で済ませている。

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