高校も大学も頭を抱える「センター試験改革」あまりに多すぎる問題点

2021年1月、新試験開始だが…
倉元 直樹 プロフィール

高校関係者は、ほとんど反対

では、これまでの大学入試制度から何が変わるのだろうか。大きな変更は以下の3点である。

①全問題がマークシートを塗りつぶす形式のセンター試験に対し、新共通テストでは一部に「記述式問題」が導入される。

②英語の評価を「読む」「聞く」のみから「話す」「書く」も加えた「4技能」に転換するために民間業者が運営する検定試験が活用される。

③個別選抜に「主体性」の評価が取り入れられる。

以上である。ただし、新制度の詳細はいまだに詳らかになっていない。

この一連の流れについて、事情に通じた高校関係者と大学関係者は、前代未聞の危機として極めて深刻に受け止めている

 

そもそもの問題点は、当事者である高校や大学の実情を斟酌せずに導入が決められたことにある。

高校側の受け止め方はどうか。筆者が勤務する東北大学では、昨年1月から3月にかけて、東北大学への志願者を多数抱える高校を対象に調査を行った。

結果はすでに公表されているが、一般入試の全受験生に民間の英語資格試験を課す方針に「賛成」と答えた高校の割合が8%大学入学共通テストに導入される記述式問題を「重視すべき」と答えた高校は6%に過ぎなかった。

高校の訴えは切実だ。民間試験を課すことに関しては、地域や家庭の格差が成績に直結することや、異なる試験の結果を比較する不公平さなど、これまでも再三指摘されてきた問題点に加え、学校行事や部活動を含む高校生活が破壊される恐れや、授業が外部試験対策に陥ること、他の教科に割く時間が削減されることなど、懸念は広範囲に及んでいる。

〔PHOTO〕iStock

記述式問題に関しては、個別試験で測るべきといった意見や50万人が受験する共通テストで迅速かつ正確な採点が可能なのか、といった疑問が数多く寄せられた。

主体性評価に関しても、昨年5月に開催したシンポジウムでは、大学関係者も立場の異なる高校関係者も異口同音に「『主体性』は重要だが、直接測ろうとすべきではない」という意見で一致した。

最も本質的なのは「大学入試」に課されると知ったとたん、それまで自ら進んで行っていた諸活動が点数稼ぎの一環と化し、受験生の行動から逆に主体性が失われるのではないか、という懸念である。

そもそも改革の根拠が疑わしい

3つの改革にはそれぞれ根拠と実効性、実現可能性に疑問が残る。

英語教育関係者の中には、4技能をバラバラにして測ることに関する反対論も根強い。

民間試験導入の根拠となったのは現在の大学入試では英語を「話す能力」が評価されていないことだった。しかし、ほとんどの受験生が受けると予想される民間試験でも、数十万に及ぶ受検者の「話す能力」の測定技術は大学入試政策に合わせて慌てて開発されているのが実情だ。

記述式導入は、国立大学の一般入試個別試験で国語、小論文、総合問題のいずれかが課される募集人員が4割程度しかないことが理由とされたが、実は、他の科目も含めて小問まで遡って分析して同じ方法で集計すると9割以上で記述式が出題されている。

共通テストに記述式が導入される数学に至っては、国立大学の入試問題のほぼ全てが記述式である。論拠とされた事実そのものが最初から存在しないのだ。