上空から見た馬毛島。地権者が滑走路工事を進めた(筆者撮影)

「いずも空母化」と「防衛省が160億円で馬毛島買収」との深い関係

佐世保は米空母の準母港になる

政府が米空母艦載機の陸上離着陸訓練(Field Carrier Landing Practice=FCLP)の候補地として、鹿児島県西之表市の馬毛島(まげしま)を取得する方針を固めた。米軍佐世保基地の「空母準母港化」が現実化しそうだ。

馬毛島は、横須賀基地の米空母「ロナルド・レーガン」の艦載機によるFCLPに使われる。しかし、日本政府は米軍の運用に注文を付けられないため、使い方は米軍次第となり、佐世保へ入港する空母艦載機の訓練基地として利用することも可能となる。

これにより、米軍の基地機能は格段に強化される。また馬毛島を自衛隊基地とすることで、空母化する護衛艦「いずも」と新たに購入するF35B戦闘機を組み合わせた、南西防衛のための新たな訓練拠点にもなる。

 

米軍機「厚木から岩国へ移駐」の持つ意味

佐世保基地には強襲揚陸艦「ワスプ」など沖縄の米海兵隊の「足」となる揚陸艦4隻のほか、掃海艇4隻が配備されている。

現在のところ空母は配備されていないが、空母の佐世保入港の歴史は古い。1967年には米海軍の原子力空母「エンタープライズ」の佐世保入港をめぐり、革新団体、学生らによる入港阻止闘争が繰り広げられた。

このエンタープライズの初入港以来、繰り返されてきた「入港反対」の訴えも虚しく、空母の佐世保入港は15回を数える。リンカーン、レーガンが3回ずつ、エンタープライズ、カール・ビンソン、ジョン・C・ステニス、ワシントンが2回ずつ、ニミッツが1回となっている。

1983年に佐世保に寄港した空母「カール・ビンソン」と、反対する団体の船(Photo by gettyimages)

横須賀配備の空母の場合、沖合で艦載機を発艦させ、甲板、格納庫ともほぼ空っぽになった状態で横須賀へ入港する。それに対し、佐世保に入港する空母は艦載機を満載しているのが特徴だ。

佐世保へ入る空母が艦載機を積んだままなのは滞在期間が5日前後と短いことが理由だが、逆に言えば5日前後と短期間の寄港になるのは、艦載機を降ろす基地が近くにないからだともいえる。

例えば、レーガンの艦載機は横須賀基地と同じ神奈川県にある厚木基地を利用してきた。しかし、佐世保基地に入港する空母の艦載機が厚木基地を利用しようにも、佐世保-厚木間の距離は約900kmと遠い。実際の艦載機発艦はより遠方の沖合で行われるから、佐世保入港前の空母から発艦した艦載機は1000km以上の距離を飛行しなければならなくなる。

現在、米軍が硫黄島で行っているFCLPに至っては、厚木基地から硫黄島までの距離が1200kmもある。これについて米軍が「遠すぎる」と不満を訴えたことから馬毛島への移転が浮上した。佐世保へ入港する空母からすれば、厚木基地は遠すぎたのだ。

だが、厚木基地の艦載機部隊は、2006年5月に日米合意した「米軍再編ロードマップ」にもとづき、2018年3月、山口県の岩国基地へ移駐している。

日本政府にとって、米軍機の岩国移駐には住宅が密集する厚木周辺の騒音解消というメリットがあった。一方の米軍は横須賀基地から離れることで利便性が低下するにもかかわらず、岩国移駐をすんなり受け入れた。

もちろん米軍にも利点がある。米軍は艦載機の岩国移駐でスカスカになった厚木基地を1平方メートルも日本政府に返還していない。また移駐先の岩国基地では、官舎、宿舎、格納庫など必要な施設を日本政府の費用で建設させた。

この結果、米軍の艦載機部隊は厚木、岩国という二つの基地を労せずして手に入れることになった。これが岩国移駐を受け入れた理由のひとつである。