ZOZO前澤社長にPayPay…「バラマキ戦法」のホントの効用

ある意味、最強の顧客獲得手段だ
加谷 珪一 プロフィール

企業側はポイントの発行に一定のコストが必要となるので、これは事実上の値引きである。今回のPayPayは初期段階の施策としては成功だったが、ある程度の利用者を獲得した後も高額ポイントに頼る形になると、このパターンに陥るリスクが出てくる。

ポイントのバラマキで疲弊してしまった例としては航空会社のマイレージが代表的だろう。

航空会社は顧客の囲い込みのためにマイレージを乱発。一時はうまく機能したが、携帯電話とは異なり、利用者が最後の最後に優先するのは、運賃と利便性(自分が乗りたい日時に便が存在するのか)の2つになる。航空会社はやがてマイルの負担に耐えきれなくなり、一部の会社はマイルによる特典旅行の基準を厳しくするなど、事実上のマイルの減価に踏み切らざるを得なかった。

〔PHOTO〕Gettyimages

消費増税に伴う景気対策としてのポイント還元策に至っては、ある意味で最悪の手法といってよい。増税した分をポイント還元で消費者に戻してしまうのなら、そもそも増税をする意味がない。しかも効果はごく短期間なので、ほとんど継続性もない。

「読むとキャッシュバック」される新聞も登場

ここまでひどくはないにせよ、ポイント還元をやり過ぎて、バラマキ依存症に陥っている事業者は少なくない。これは最終的には経営の問題なのだが、今の日本経済の現状も大きく関係している。

経済が順調に伸びている場合、同じキャンペーンでも、当たる確率が極めて低くても、夢のような金額を得られるタイプのものが人気となりやすい。一方、景気の基礎体力が弱い状態の場合には、現実的なキャッシュバックのキャンペーンに人気が集中する傾向が顕著となる。説明するまでもなく、今の日本経済は後者に該当する。

 

日本の労働者の実質賃金はマイナスになる年も多く、公務員や大企業の正社員など一部を除き、多くの消費者は余裕のない生活を送っている。商品やサービスを選択するもっとも重要な基準は、身近なポイント還元策であり、企業もこの部分に依存せざるを得ないという側面がある。

つまりバラマキは、手っ取り早く顧客を獲得する最強の手段であり、今後も似たような手法が多用される可能性が高い。

海外でも斜陽産業においては似たような手法が模索されており、購読者を維持するため、紙面に印刷されたマークをアプリで読み取ると現金がキャッシュバックされるキャンペーンを実施する新聞社も出てきている。企業側にとっては頭の痛い問題といってよいだろう。