ZOZO前澤社長にPayPay…「バラマキ戦法」のホントの効用

ある意味、最強の顧客獲得手段だ
加谷 珪一 プロフィール

ストック型ビジネスであれば効果がある

こうしたバラマキ的な手法については、一部から批判の声も出ているようだが、PayPayも前澤氏も、バラマキ手法を採用することで、当面の目標は達成したように見える。

ではビジネスとして見た場合、こうした手法には意味があるのだろうか。

経営学的には、初期段階で大きな損失を抱えたとしても、顧客獲得を優先するという手法は珍しいものではなく、多くの業界でこうした戦略が採用されている。だが、この手法が効果を発揮するためには、ある条件を満たしている必要がある。それは対象となるビジネスが「ストック型」になっていることである。

ストック型ビジネスというのは、ひとたび顧客という資産(ストック)を作ることができると、そこから半永久的に収益を上げ続けられるビジネスのことを指す。携帯電話のサービスはその典型といわれており、キャンペーンで損失が出たとしても、多くの顧客を囲ってしまえば、その顧客は、数年から十数年にわたって電話を利用してくれるので、長期的に見れば十分に採算が合う。

 

携帯電話を変えると、日常生活にいろいろと支障をきたすので、利用者はよほどのことがなければ携帯電話の会社を変えない。だが飲食店などは、近くに美味しい店が新規出店すれば、顧客はすぐにそちらに流れてしまう。こうした業態はストック型にはなりにくい。

その点からすると、PayPayのような決済サービスは、消費者の基本的な生活インフラなので、携帯電話と同様、典型的なストック型ビジネスということになる。PayPayは電子マネーとしては後発になるので、シェアを獲得する目的であれば、かなりの額まで先行投資が許容されるはずだ。

〔PHOTO〕Gettyimages

前澤氏の場合も同様である。前澤氏の場合、これで直接ビジネスができるわけではないが、ツイッターにおいてフォロワーは潜在的な顧客であり、この数が多いか少ないかですべてが決まるといってよい。また今回の企画では世界記録を樹立したので、こうした名声は長期にわたって利益をもたらす。

前澤氏の場合、1億円で600万人のフォロワーを買ったようなものなので、1人あたりの金額に換算すると17円となる。キャンペーンの終了でフォロワー数は激減する可能性が高いが、もしかすると、フォロワーの減少数でも大きな記録となり、さらに話題となるかもしれない。こうした世間の話題がわずか1億円で買えた、と考えると、安い買い物だったのかもしれない。

一方で効果がない事例も

だが、すべてのプロジェクトにバラマキ的な手法が合致するとは限らない。継続性や資産性がない場合には、投じた金額に見合う効果が得られない可能性が高い。こうしたケースの典型例のひとつが、恒常的なポイント還元策である。

ネットかリアルかを問わず、購入した金額に応じてポイントを付与するという施策は、多くの業界で実施されている。だが、この手法が日常的になりすぎると、多額のポイントを付与し続けないと顧客が離れてしまうという悪循環に陥る。