新刊の感想を語る本橋さん(文京区・講談社にて)

本橋麻里が語る「私はまだまだ成功なんてしていない」【動画付き】

カーリング・銅メダリストの告白⑥
平昌五輪で銅メダルを獲得したカーリング女子代表チーム、ロコ・ソラーレ。チームをゼロから立ち上げた本橋麻里さんの初の著書『0から1をつくる――地元で見つけた、世界での勝ち方』(講談社現代新書)が発売されて1週間が経ちました。23日に出版記念記者会見を終えたばかりの本橋さんのメッセージを、特別動画とともにお届けします!
 

出版記念記者会見を終えて

私にとって初めての著書『0から1をつくる――地元で見つけた、世界での勝ち方』が発売されました。

23日には会見を開いていただき、多くのメディアの方の前で出版後の率直な気持ちをお伝えしましたが、やはり最終章の「エクストラエンド」、チームのみんな、主人からのメッセージに最も驚きました。

この章は出版社からのサプライズで、私は全く知らなかったのです。

本の作成が進行する中、みんなでチームを作ってきたロコ・ソラーレなのに、この本は私だけのものになってしまう、そのことだけが、ずっとひっかかっていました。

ですが、それが温かいメッセージを寄せてもらったことで、みんなの本になった気がして嬉しかった。

なので、著者は私ですが、みんなの本です。多くの方に手にとってほしいです。

「楽しかったけど、悔しかった」

平昌五輪が終わって間もなく、講談社の方が「これまでの経験や成功を赤裸々に文字にすることで、コミュニケーションの大切さや、カーリングの未来と可能性について多くの方に伝えてほしい」とおっしゃってくれました。

正直、少し意外というか、戸惑いました。

私は、まだまだ「成功」からは程遠いところにいて、元々、未来や可能性に満ち溢れた人間ではないと自覚しているからです。

初めてカーリングに世界に出たのは15歳、中学3年生の時でした。

今、考えるとかなりきつい名前なのですが「マリリンズ」というチームで日本ジュニア選手権を優勝して、世界ジュニア選手権に出場するためにブリティッシュ・コロンビア州(カナダ)のケロウナという街へ行ったのが、生まれて初めての渡航です。

結果は10位でした。参加チームも10ヵ国。最下位です。それまでのジュニア選手権に出場した日本代表チームのワーストの成績だった記憶があります。

だからよく、「ジュニア世代から世界と対等に渡り合ってきた」と書かれたり、「スター街道を歩いているね」と言われたりするのですが、私の世界デビューは「楽しかったけど、悔しかった」で始まっているんです。

その「悔しい」という気持ちは今も私の胸に残る財産ですが、それ以上にカナダで観たカーリングの風景を、「みんな楽しそうだなぁ」と感じることができたのも私としては大きかったです。

現地の運営の方もコーチも試合前には「Have fun!」って送り出してくれる。ひょっとしてこれが私の初めて覚えたカーリングの英語かもしれません。おのずと「英語はちゃんと勉強しようかな」という気になったりもしました。

そういった、私の原体験や原風景をベースに、青森で過ごしたかけがえのない時間で勉強させてもらったもの、熱心に私たちを応援してくれた個性の強い方々との出会い、ロコ・ソラーレをなぜ結成してどんなコミュニケーションをとってきたか……etc.

そういうことであれば紹介できるかもしれないと思って、まとめてみました。どんなふうに読まれるのか、どのような意見をいただけるのか、不安と楽しみ、今は両方であふれています。ぜひ意見を聞かせてください。

会見には多くの報道陣が集まった

コミュニケーションはデータです

この本のテーマの一つに、「コミュニケーション」があります。

講演やイベントなどでも、

「コミュニケーション能力が低いのですが、人間関係を円滑にするためのコツは?」

といった質問を受けることは少なくありません。現代のキーワードの一つなのかもな、と私もその重要性を改めて感じています。

その質問のケースにもよりますが、「データだと捉えてください」と答えることがあります。

カーリングは少し独特なゲームで、メンタルスポーツの側面もあります。

適切なショットやスイープのために、アイスの上では常に頭を働かせてないといけないですし、狙った場所にストーンを運ぶためには、ストーンが動いている短くて7秒、長くて13秒の間に、ストーンの挙動やアイスの状態を確認しながら、選手同士で指示を出し合わないといけません。

同時に1試合2時間から3時間、さらに五輪や世界選手権や日本選手権などの大きな大会は、1週間以上の連戦をこなすことも珍しくありません。

アイス内外での濃縮された時間を、有意義にストレスなく過ごすため、強いチームになるためには選手同士の質の高いコミュニケーションは欠かせないのです。

そのためには、アイス内外で他者に興味を持って、ロコ・ソラーレでいえば、(鈴木)夕湖は卓球がうまいとか、(吉田)夕梨花は馬刺しが好きとか、直接、カーリングに関係ないプライベートを知ることも大切な作業だと私たちは考えています。

雑談の中でも、この人の笑いのツボはどこで、どんな種類の話題はあんまり好きじゃないんだとか、無意識下で収集できるんです。

商談でも就職活動でも恋愛でも、アタックする時には相手のことを調べ、知ろうとしますよね。基本的にはそれと同じかもしれません。