「“あなた自身”の幸せは何?」現代人に効くキルケゴールの哲学

自分が信じる真理を人生で証明しよう
原田 まりる プロフィール

絶望しないための「実存」のありかた

キルケゴールは自分の生き方や、自分にとっての真理にとにかく熱中していた哲学者であり、ニーチェやサルトルと並ぶ「実存主義哲学」の先駆者でもあります。実存主義哲学というのはざっくり説明すると「いかにして生きるべきか」といった、人間の存在理由を問う哲学の中のジャンルです。

哲学というと名言があって自己啓発的な側面があるというイメージを持たれがちですが、実は「哲学史」の中で「人間の存在理由」を突き詰めているのは実存主義くらいで、決して哲学の主流というわけではありません。

 

キルケゴールが唱えた主観的な人生に対する熱意は「情熱を持って生きないと、自分の世界は妬みに支配されてしまう」といったキルケゴールの言葉に集約されていると思います。美意識の人、と呼ぶのがふさわしい哲学者です。自分の生き方を過剰なまでに真摯に問い続けたキルケゴールの言葉は、悩める現代人の心に突き刺さります。

ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』上巻(原作:原田まりる 作画:荒木宰 キャラクター原案:杉基イクラ)©️小学館

そしてキルケゴールが現代人の心に響くであろう理由はこれだけではありません。彼は机上の空論的な理想論として人生を説いたのではなく、ある程度の放蕩を楽しんだ上で「けど贅沢では人の気持ちって満たされないんだよな」という自分の真理にたどり着いたことを書き綴っている「実践者」でもあるのです。

最近ではZOZOTOWNの前澤社長がTwitter上で行なったお年玉企画が、「当選者見てたら志高い人ばっかりじゃん!抽選じゃなくてクラウドファンディングじゃん!」と賛否両論を呼んでいましたが、ただお金が欲しい、贅沢で自分を満たして幸福感を得たいという欲望を追い求めても結局は絶望するだけ、とキルケゴールは説いています。

これは「実存の三段階」と呼ばれるもので、まず初めに人は物質的に豊かな生活を求め欲望を満たそうとします。これが「美的実存」の段階です。

しかし、途中で「うーん、これだけでは満たされない、虚しい」と絶望に襲われます。そして次に役割を持って社会のために生きようとする「倫理的実存」の段階にステップアップします。欲望を抑え、清い心で生きようと「良き人」になろうとする段階ですね。

しかし、結局ここでも絶望を味わうことになります。キルケゴールによると良心を磨けば磨くほど、自分の過去の悪行や人間としての不完全さに嫌気が差したり、罪悪感に耐えられなくなってしまう、とのことです。そして最終段階は「宗教的実存」人間のちっぽけさを受け入れ、神を信仰することにより救いを求める、という段階ですね。