AIロボットは認知症介護を救うか?ロボット「ATOM」の試み

もっとも頼れるパートナーを目指して
奥津 圭介 プロフィール

行動パターンを分析

総人口における65歳以上の割合が27%(出典:内閣府「平成29年版高齢社会白書」)に達している日本では、世界の国々の中ではもっとも早く高齢化社会に突入している。その課題の一つが認知症である。

認知症の主な要因はもちろん「加齢」。72歳を過ぎると発症しやすくなり、85歳では3人に一人、90歳では二人に一人が「認知症」になるのが現実だ。それも少しずつ、若年化し始めているという。2018年度10月期の連続ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」では、若年性アルツハイマーに苦しむ若い産婦人科医と、元小説家との恋愛が描かれ、大きな話題を呼んだ。

今後、認知症を発症する高齢者は、2025年までに700万人に増加するとも予測されている。そのため、認知症患者にかなりの高確率で発症する暴言や妄想などの「行動・心理症状」(以下・BPSD)に家族や介護者がどう対応するかというのが、大きな課題となる。

 

「記憶機能及びその他の認知機能の低下が原因で、日常生活に支障が生じる状態が『認知症』であると、介護保険法の第一章・第五条で定義されています。支障が出ている認知症の方の日常生活をどのように見ていくかが、介護する上では大きな問題になります。

人が人の生活を24時間見続けるのは、実質、不可能です。そこでAIによる推論や分析能力の『機械知』を利用し、それを経験や体験、知恵を含む『人間知』とコラボレーションさせてケアしていかなければいけない」(羽田野氏)。

社団法人認知症高齢者研究所の代表理事・羽田野政治氏

具体的には、たとえばほとんどの人は、朝起きて、顔を洗って歯を磨き……というような無意識の行動パターン(生活習慣)を持っている。ベッドをどちらから降り、どのルートを通っていつトイレに行くのか、何時に外出するために着替え始めるのかも決まっている。そして、いつもと同じ電車の、いつもと同じ場所に乗って職場などに向かう。

この「決められた行動パターン」をIoTセンサーで感知させ、環境やバイタル計測により評価パラメーター化して行動を記憶させる。それを元に、センサーと連携したAIによるチャットボットが「もうすぐデイサービスのお迎えが来るから、着替えましょう」「そろそろお薬を飲む時間だよ」などと、教えることができるという。

さらに、この行動パターンが崩れているときは、その人に何らかのストレスがかかっている状態である。

「変な夢を見たのか」「金銭的な悩みがあるのか」、または「家族から何か言われてストレスがかかったのか」など、考えられる原因はさまざまだ。そこで、チャットボットは「いま、何をしているの? どんな気持ちなの? 何がしたいの?」と話しかけ、その人のニーズをさらに探っていく。IoTセンサーと連携して、認知症患者の生活支援を行うこの「AIによるチャットボット」が、羽田野氏が今、研究・開発している「KCiS(ケーシーズ)」である。

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