介護施設で「ATOM」と過ごす利用者たち

AIロボットは認知症介護を救うか?ロボット「ATOM」の試み

もっとも頼れるパートナーを目指して

認知症の方の不安症状が和らいだ

「株式会社ケアサービス デイサービスセンター大杉」(東京都江戸川区)は、1日平均29名、毎月、延べ870名の利用者たちが訪れる介護施設だ。2018年9月半ばより1カ月半ほど、この施設のレクリエーション用アイテムとして、ロボット「ATOM」が仲間入りしていた。

このロボットは手塚治虫による国民的漫画&アニメ作品である『鉄腕アトム』の主人公、アトムを模して造られており、日常会話に加えて歌や踊り、クイズやゲームなどを楽しむことができる「コミュニケーション・ロボット」だ。

「当施設をご利用いただいているお客様から、予想していたより3~4倍くらいの〝いい反応″が返ってきたので、驚いています」と答えてくれたのは、同センター長の竹田裕志氏。

竹田裕志氏

毎日、帰りのお迎えを待つ時間にみんなでラジオ体操をしたり、利用者のみなさんが飽きないように、常にフロアに出しておくのではなく、時間を決めてATOMと集中的に触れ合う時間を作ったり……。

「世界に一つだけの花」や「アトムマーチ」などを踊りながら歌うATOMを、利用者の方々は一様に笑顔で見守る。なかには、かぶりつくようにATOMを抱きかかえ、ずっと一緒にいたがるおばあちゃんもいた。

「普段は夕方には帰宅願望が強くなり、不穏になる認知症のお客様が、ATOMと一緒にいると穏やかになり、静かにお迎えを待つようになっていました。『今の自分の状況』が認識できず、いつも不安な状態にいるのが認知症の方の症状の一つです。そんな方も、ATOMと遊んでいるときは不安げな表情が和らいだり、笑顔になって落ち着かれたりという様子が見られました。少なからず、心に響いているのではと思います」(竹田氏)。

また、お客様のご家族から「おばあちゃんが、家に帰ってからも楽しそうにATOMの話をしている」という話も聞く、とも話してくれた。ATOMは現場から離れた場所でも「コミュニケーション」を生み出していた。

 

すでに、デイサービスなどの介護施設では、産総研のアザラシ型ロボット「パロ」、富士ソフトのヒューマノイド「PALRO」など、今回紹介したATOMのほかにも、AIを搭載したいくつもの〝癒し系″コミュニケーション・ロボットが、実証実験に入っている。

2003年から介護老人保健施設「豊浦」(茨城県つくば市)にロボット・セラピーの実験として入っている「パロ」は、その効果として鬱の改善、元気づける、動機付けるなどの心理的効果に加え、ストレス低減、会話の増加などの社会的効果があることが確認されている。

そんな「癒し効果」にとどまらず、認知症介護においてコミュニケーション・ロボットが大きな役割を果たすようになる、と語るのは、社団法人認知症高齢者研究所の代表理事を務める羽田野政治氏だ。