一度大失敗した「リモートワーク導入」を成功に導いた3つの施策

経営者が実体験から語る
楠山 健一郎 プロフィール

リモートワークで損なわれたこと

先に申し上げておくと、弊社はかねてから社員間のコミュニケーションを大切にしてきました。特に私が常日頃意識しているのが社員への声がけです。

新しい人が入れば「どう、慣れた?」、頑張っている報告を受けている社員に合えば「聞いてるよ、がんばっているね」などと声をかけることにしており、それにより社員はモチベーションが高まったり、社長に対しても気軽にアイデアを話すきっかけになるのではないかと考えています。

特に社員が50名以下の時は、彼らの名前も顔も趣味も夢も一人ひとり細かくわかっているので、その人にあった声かけができ、効果は大きかったと思います。

 

いわゆるEQです。EQとは自分だけでなく相手の感情を把握し、共感したり他者と協力したりする感情指数のことで、仕事を円滑に進めパフォーマンスを上げ、最終的にはEQの高さと会社の業績には相関があるとアメリカでも考えられています。

社員がEQを発揮するために重要なのが、コミュニケーションの量です。ちょっとした雑談や声掛けが多いほど、社員とマネジメント側との垣根は低くなり、現場から様々な意見やアイデアが出やすくなります。

当然、アメリカに拠点を移してからも、私はスカイプやGoogleハングアウトなどのビデオコールを通して社員とコミュニケーションを取り続けていました。

〔PHOTO〕iStock

しかし、このやり方ではこれまでの成果を再現するのは難しかった。創業間もない頃から、社員と対面しながらの声かけや即席ミーティングでコミュニケーションを頻繁に取り、新しいアイデアを議論、実行しつつ、すぐに課題を発見、改善してきたコミュニケーションの量を再現するには不十分だったのです。

実際、アメリカからのリモートが中心になると、誰がオフィスにいるのか、いま話したい人が席にいるか、いないかといったことがわかりません。打ち合わせが必要な人と、共有カレンダーの空いている時間を調整して、ようやくビデオコールを実施する、という有様。「ちょっと話すこと」が、「会議設定」という大げさな手続きを必要とするようになります。

リモートワークが、大きな壁になっていたのです。

理念を共有できない人材を採用してしまう

理念や方向性を示す社長、もしくは経営陣、マネージャーとのコミュニケーションの総量が減れば、自然と会社の理念が社員に浸透しにくくなります。現在、私たちは会社と理念やビジョンを共有できる人のみを採用していますが、アメリカに拠点を移した際は採用の基準が能力や学歴などに寄ってしまったケースがありました。

その結果、会社の理念や方向性と合わない人材が入社し、組織と社員がWin-Winとならないケースが出てしまいました。

経営者である私がリモートで会社を経営しようとしたことで、さまざまな問題が起きてしまっていました。これが弊社の失敗であり、「悪いリモートワーク」だったと痛感しています。