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日本最大のマナー?「神前結婚式」という創られた伝統はこう生まれた

マナーと合理性を考える

マナーが増えすぎている…

日本では食事の時に食器を持ち上げても問題ないが、他の国では無作法とされる。逆に、日本に来た外国人が箸の置き場に困ってご飯に突き刺してしまえば、多くの日本人は驚くだろう。

とはいえ、表立って批判したり、とがめるべきかといえば、そうでもない。マナーとは、あくまで、ある地域や文化の暗黙の決まり事にすぎないのだ。

だが、マナー講師と呼ばれる人々がマナーを増やしている。

お酒を注ぐ時には瓶のラベルを見えるようにする、電話は2コール以内にとる、名刺交換をする時には相手の名刺を両手で受け取り文字には指をかけないようにするなど、マナーが次々と作り出されている。

ノック2回は海外ではトイレ用、3回は日本のローカル・マナー、4回が国際標準といったマナーもあるようで、いったい何回ノックすれば良いのかもわからない。個人的には4回は叩きすぎな気がする。

最近では、とっくりの注ぎ口からお酒を注ぐのは失礼という謎のマナーが、その真偽も含めて話題になった。

新入社員研修や就活対策でマナー講習を課す会社や学校もあり、他人事ではない人も多いだろう。そして、とりわけマナーに敏感になるのが冠婚葬祭だ。極端にいえば、マナーの体系的・集団的実践を求められるのが冠婚葬祭なのである。

そして、そのように考えると、東京には「マナーの聖地」と呼べる場所がある。飯田橋にある東京大神宮だ。

最近では、縁結びのパワースポットとして多くの参拝客を集めているが、実は、同神宮こそ、「神前結婚式」という日本最大のマナーが発明された場所なのである。

2019年正月の東京大神宮

神前結婚式の作り方

神前結婚式というと古くからある婚礼作法のように思われるが、実は、100年ほど前に整備されたものだ。そして、その実験場となったのが東京大神宮である。

東京大神宮は、元々、伊勢神宮の東京出張所として明治初期に創設された。現在は飯田橋駅を最寄りとする富士見にあるが、かつては現在の帝国ホテルの近くにあり、一般的には日比谷大神宮と呼ばれていた。

 

とはいえ、日比谷大神宮は単なる遥拝所ではない。当時の明治政府が目指していたのは、皇祖神と皇統の崇拝を国民全体に広めることだ。

そのために、伊勢詣りを主目的としていた伊勢講を再編成して神宮教会が作られ、その事務所が日比谷大神宮に置かれたのである。

その後、神宮教は教派神道の1つになる。教派神道とは、明治初期、さまざまな民間信仰のうち、組織的にまとまったものが宗教団体として認められたものだ。

だが間もなく神宮教は解散し、1899年に財団法人として神宮奉斎会が設立された。この改組が持つ意味は大きい。