メイウェザー戦の次に那須川天心を待ち受ける「待望の一戦」

思いは交錯するけれど
佐藤 嘉洋 プロフィール

だからこそ「実現してほしい」

だから、このような無茶なマッチメイクはもう受けなくていいというのが、那須川に対する個人的な希望だ。充分夢は見させてもらった。格闘技ファンの間では、いつの時代も異種格闘技戦の話題は絶えない。私も酒の席などでよく聞かれる。「ケンカしたらどっちが強いの?」これまで幾度答えてきたかわからない。

「僕たちはケンカをするためにやっているわけではないんです」

実際問題、ケンカになれば組み技もあったほうが強い。そこから相手を倒して寝技に持ち込んだら、という話になると、1vs1の「タイマン限定」というルールを成立させなければならない。もし2vs1だったら、1人に寝技をかけても、もう1人の立っている方にやられてしまう。しかしルールに則った時点で、ケンカではなくなる。ケンカにルールは無用なのだ。ケンカのときに砂で目潰しされて負けても「卑怯だぞ!」というのは言い訳になる。

 

反対に、「ケンカにルールは無用」を突き詰めると、武器を使ってもいいことになる。ピストルを持っている相手には、範馬勇次郎以外ほとんどの相手が負けるだろう。一気に話を飛躍させると、核ミサイルのボタンを押せる人が一番強いことに。また、誰かがボタンを押せば他の誰かも応戦する可能性が高い。

我々が「ケンカにルールは無用」を認めることによって人類存亡の危機に陥ることになる。ルール無用は大変な危険性をはらんでいるのだ。

しかしながら、尾崎豊が『卒業』で歌っていた「誰かのケンカの話に熱くなる」のは、中高生男子だけじゃない。男は一生、誰かのケンカの話にみんな熱くなるのだ!

だから私は酒の席で聞かれるたびに、ケンカは人類存亡に関わることを一生答え続ける覚悟でいる。

那須川がメイウェザーと拳を交えた3週間前、同じく連戦連勝を続けKOを連発している、日本のキックボクシング軽量級の常識を覆したもう一人の男が、固有名詞は避けながらもついにリング上で吐露した。「実現させたい」と。

なにを?

那須川天心との対決を、だ。

だれが?

武尊が、だ。

武尊は2014年に復活したK-1のエースで、37戦36勝21KOとこれまた驚異的なレコードを誇る選手だ。もう何年も待ち望まれていた武尊vs那須川天心は、武尊自身、双方のイベント間の契約や壁を鑑みて長らく沈黙を貫いていた。

しかし、真の強者はやはり強者を求めるのだ。武尊は絶対に逃げる男じゃない。本人同士がやりたいというならば、これはもう周りが実現に向けて動くしかない。

【PHOTO】gettyimages

私はK-1グループにおける名古屋Krush大会実行委員長という立場もあるが、武尊があそこまで覚悟を決めて発言したのだ。だから私も少なからず覚悟を決め、一般社団法人日本キックボクシング選手協会代表理事として、そして何よりいちキックファンとして、微力ながらもペンを取らせてもらった。

覚悟…事に臨んで、どんなに危険や困難(不利な立場に立たされるようなこと)があったとしても 見苦しい行動はするまいと心を決めること。また、そのゆるぎない心。[新明解国語辞典第7版]」

イベント間の選手契約や条件の折り合いはどうすべきか。ビジネスとして双方が納得、妥協するにはどうすべきか――。問題は山積みで、実現への道のりは険しく、困難も数多くあることだろう。けれど、もし今の武尊と今の那須川天心がお互いに「戦いたい」という気持ちを持っているのなら、東京ドームを満員にできる。断言できる。

私は武尊vs那須川天心が観たい。心からそう思っている。

あなたはどうですか?