わずか半年で突然休園…待機児童「目玉政策」が引き起こした大混乱

新タイプの保育園に何が起きているのか
小林 美希 プロフィール

「企業主導型はゆるい」という噂が広がり…

保育所を新しく開設する大きなハードルの一つは、保育士確保だ。

保育士不足が顕著になるなか、事業者が保育所を始めやすくするために保育士の配置基準を実質、規制緩和した。

保育施設には、保育士の配置基準が定められている。認可保育所なら、例えば0歳児は子ども3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児は「6対1」など年齢ごとに決められているが、企業主導型保育は配置基準の100%が保育士の資格をもつ者でなくてもよい制度とされた。

企業主導型保育は、保育士の割合が100%、75%、50%の3段階が認められている。それぞれに助成金の額に差がつけられて100%が一番高くなっている。

初年度の16年度は、保育士比率100%の施設が55.3%に留まり、同75%の施設が20.6%、同50%の施設が24.1%で約半数が100%を満たさずスタートした。

17年度は保育士比率100%の施設が76.7%に上昇したが、保育士比率75%、50%の施設はそれぞれ1割あった。

ある不動産業者は「“企業主導型はゆるい”という噂が広がり、配置基準があることも知らないような業者が次々に保育所を作ってしまった」と明かす。

保育ニーズのない地域にも乱立したため、共同通信が7~8月に行った調査では、「定員に占める利用児童数の割合」が平均で49%と、半分を割り込んでいた。

東京都世田谷区では、2018年4月に開園した企業主導型保育所「こどもの杜(もり)上北沢駅前保育園」が11月に入って突然、休園した。系列の「下高井戸駅前保育園」も他の事業者に切り替わるなどして波紋を広げた。

休園し人気のない「こどもの杜上北沢駅前保育園」(11月27日撮影)
「下高井戸駅前保育園」には新たな保育園名の貼り紙が(11月27日撮影)

「不採択」が続く異例の事態

一方で、保育の実績と定評のある事業者が待機児童の多い地域に保育所を作ろうとしても“不採択”になるという事態も起こった。

18年度は約3万人の受け皿整備が掲げられ、2288施設、定員5万1499人分の申請があった。審査を経て10月末に、約1500施設、約3万5000人分が助成決定の「内示」を受けたが、申請のあったうち3割が不採択となった。

 

審査を行った児童育成協会は、10月末にメール1つで内示を通知した。そこには、なぜ不採択になったかの理由は示されず、「個別の結果内容についての回答は行っておりません」という不誠実な対応をとったため、採択されなかった事業者から「審査が不透明だ」という批判の声があがっている。

審査項目は、①待機児童対策への貢献、②多様な働き方に応じた保育の提供、③事業に要する費用、④事業の持続可能性、⑤保育の質、⑥保育事業の実績――とされている。

また、審査にあたっては優先的に考慮される項目があり、①多様な働き方に応じた保育の提供(7時以前の早朝保育、22時以降の夜間保育、休日保育の実施)、②待機児童対策への貢献(認可保育所に入れなかった人数が多い市区町村)、③その他として中小企業による設置(共同利用の相手先が確保されていればさらに評価)となっている。