「努力なき自負心は単なる傲慢です」丹羽宇一郎氏が教える仕事の流儀

人間は死ぬまで努力だよ
「逆境が心を成長させる」「嫌な上司は反面教師にせよ」「空気を読んでも顔色は読むな」――丹羽宇一郎氏が最新刊『仕事と心の流儀』(講談社現代新書)で伝えている数々のメッセージは、日々奮闘するビジネスマンすべてが理解しなければならない、「働くこと」の本質である。

努力に終わりはない

『仕事と心の流儀』は、私から働いているすべての方々に送るエールです。

これから日本の中心となる若い人に、いま私がいちばん知ってほしいのは、仕事を通して得られる人生の喜怒哀楽、とりわけさまざまな喜びです。

新人の頃は小さな仕事しか任せてもらえず不満を感じたり、失敗をして落ち込んだりすることもあるでしょう。「こんな会社、辞めてやる」と思うこともあるかもしれません。

でも、そこで投げ出さず、「負けてたまるか!」と歯を食いしばって頑張っているうちに、少しずつ大きな仕事を任されるようになります。

それをやり遂げたときに味わう喜びはことのほか大きなものですし、分かち合う仲間が多ければ多いほど、さらに喜びは大きくなります。

本当かなと半信半疑の人もいるでしょうが、まず、そういう喜びを経験するまで頑張ってほしいんです。

心の鍛錬の難しさ

また、日頃から先輩や上司をよく見ていると、「この人はなかなかの人物だな」と尊敬できる人もいれば、「下らないことばかり言ってるな」と幻滅することもあるでしょう。

尊敬できる人に巡り会う機会は、そうしょっちゅうあるわけではありません。だからこそ、そういう人に出会ったら自分の成長の糧にしてください。

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私自身、尊敬できる先輩や上司から多大な影響を受け、それを心の糧としてきました。

一方、部下を持った人は、自分よりも部下や会社のことを優先しなければならないことが多くなってきます。なかでも、部下の「心」の教育は最も重要な務めの一つです。

インドの宗教家で政治指導者でもあったマハトマ・ガンジーは、人間の成長には肉体の鍛錬、知識の鍛錬、心の鍛錬が必要だと述べています。

この三つの中でいちばん難しいのは、心の鍛錬です。

心の鍛錬の難しさは、2400年前の哲人アリストテレスが、後にマケドニア国王となる幼き日のアレクサンドロスの教育係になったとき、いちばん悩んだことでもありました。いまだに、これという〝薬〟は見つかっていません。

人間は、ちょっと油断すると邪心が芽生え、倫理を外れてしまいます。それは、昨今の企業の不祥事を見ても明らかです。だからこそ、リーダーが部下の「心」の教育をしっかりしていかなければなりません。

それだけでなく、自分自身も深く広い教養を求めて学び続け、「心」をさらに成長させていってほしいと思います。