photo by Getty Images
# 年収

公務員「定年延長論」と「給与引き上げ勧告」に覚える強い違和感

時代に逆行する霞が関の「身分保障」

いつの間に

「公務員、60歳から給与7割」という1月9日付けの日本経済新聞朝刊1面トップ記事をみて、複雑な心境になったのは筆者だけだろうか。

国家公務員の定年が60歳から65歳に引き上げられることが、ほとんど議論らしい議論が行われずに、事実上決まっているようだ。

国家公務員の給与水準を見直す人事院は、2018年8月に、5年連続となる給与引き上げを「勧告」したが、オマケに定年を現在の60歳から65歳に引き上げるべきだとする「意見書」を出した。

5年連続の引き上げ勧告は年末の法改正を経て、この1月から実施に移されている。正確には2018年4月に遡って給与が引き上げられ、その分が1月に支給される。同時に政府は定年引き上げの「意見書」についても勧告同様に受け入れ、2019年中に法案を提出する方針だというのが日経が報じたところである。

この間、国家公務員の人事制度を巡る議論はほとんど行われていないに等しい。昨年末の給与法改正にしても、多くの国民は可決成立したことを知らないだろう。

「公務員は5年連続で賃上げだそうだ。うらやましいな」といった会話をした人がいたとしたら、細かいニュースをきちんとフォローしていたか、知り合いに公務員がいるかの、どちらかだろう。

公務員の給与は「民間並み」を前提としている。5年連続の引き上げも、民間給与が上がっているから国家公務員も引き上げた、という理屈になっている。

もちろん、「民間」として参考にされているデータが大企業だけであることなど、問題点を指摘する声もあるが、自らも公務員である人事院の役人たちは一向に気にしない。

国は1000兆円を超える巨額の借金を抱え、なおかつ毎年の歳出を歳入で賄えない赤字垂れ流しだが、そこに務めていても、給与が民間並みに増えるのが「当然」というのが霞が関の論理なのだ。

このままでは財政破綻するので、消費税の引き上げが不可欠だ、と国民には言いながら、自分たちの給料を削ることなどまったく考えないのだから不思議である。

 

再雇用でなく定年延長

それだけでは済まない。さらに定年も延長せよ、と人事院が言い出したのだ。

民間は65歳まで働けるのだから、公務員も65歳まで働けるようにすべきだ、というのが人事院のロジックだろう。

確かに民間企業には65歳まで働けるようにすることを求めた高年齢者雇用安定法があり、希望する人は全員65歳まで働けるようになった。

もっとも、企業にはいくつかの選択肢がある。まずひとつは定年を65歳に引き上げる方法。確かに60歳から65歳まで延長した企業もあるが、それは少数だ。

もうひとつの方法が、「定年後の継続雇用制度」を設けるというもの。いったん定年を迎えるものの、その後は給与や職種などを見直し再雇用などの形で働き続けるというものだ。

一般には給与が半分以下にガクンと減るなど、待遇は大きく変わる。実は、民間企業のほとんどがこの「再雇用」である。

もうひとつ、定年の制度自体を廃止する方法もあるが、これを採用するところは、賃金体系が年功序列ではなく、仕事に応じて賃金が決まっているようなところが多い。