水も空気も補給不要の宇宙旅行へ! 「水の98%再生」が視野に

月・惑星探査に向けた日本独自の技術
宇宙航空研究開発機構 プロフィール

伊藤 難しかったのは電極の材質や構造で、たいへん苦労しました。実現できたのは、2011年に共同研究契約を締結してパートナーシップを組んだ栗田工業さんの技術力によるところが大きいです。

これからは、民間の企業の力をお借りしていくことが重要だと思います。

──当面の課題はありますか?

伊藤 さらにいま再生率90%を目指していますが、それでも10%の汚水が残ります。この汚水からもさらに水を取り出すことで、システム全体での効率98%達成を狙っています。

技術としては、低温真空中で水分だけを水蒸気として回収するフリーズドライで、インスタント味噌汁などで食品から水分を取りのぞくのに使われる方法です。

──水分を取りのぞくのではなく回収して利用する。発想の転換ですね。いつごろ実用化されるのでしょうか。

伊藤 この1〜2年で技術として確立し、試験機が完成しました。2018年度か2019年度には、現実的にシステムに組み込めるような実用装置として仕上げていきたいと考えています。

水再生の概念図Photo & Illustration by JAXA
拡大画像表示

CO2から水と酸素を作り出す

──生命維持システムのもう一つの柱である空気再生はどのようなしくみでしょう?

伊藤 呼気として出るCO2を取りのぞくことが基本ですが、問題はそのCO2の処理です。現在私たちが取り組んでいるのは、CO2に水素(H2)を結合させて水とメタン(CH4)を生成するサバティエ反応を用いたシステムです。

反応で生成した水を電気分解して酸素を生成し、一方の水素をまた反応に利用するわけです。

サバティエ反応サバティエ反応による循環システムの概念図 Photo by NASA

──排出CO2から水と酸素を作り、メタンが残るのですね。

伊藤 サバティエ反応はISSで実証が進んでいますが、実際には水素が足りないので処理しきれないCO2を排出します。含まれる酸素も捨てざるを得ないわけです。そこで、生成したメタンを炭素と水素に分解し、この水素も反応に使う方式を開発しています。

CO2吸着回収からサバティエ反応、水の電気分解、メタンの分解といった処理全部を行い、完全にCO2を捨てずに酸素を再生するシステムになります。

──技術的なポイントはどこにあるのでしょうか?