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水も空気も補給不要の宇宙旅行へ! 「水の98%再生」が視野に

月・惑星探査に向けた日本独自の技術
宇宙空間できわめて貴重な水や空気。
その再生技術は国際宇宙ステーション(ISS)での活動はもちろん、月惑星有人探査ミッション実現のカギとなる最重要課題の一つです。
いま、長期間・安定的に利用できる日本独自のシステムの開発が、急ピッチで進められています。
有人宇宙技術センターの伊藤剛技術領域主幹に話を聞きました。

取材・文:山村 紳一郎(サイエンスライター)

革新的な水再生システムを独自技術で開発

──ISSなど有人宇宙活動での水や空気の再生技術とはどのようなものですか?

伊藤 エアコンディショナーをはじめとした環境制御と、生活に不可欠な水や空気(酸素)を作るしくみを、まとめて環境制御・生命維持システム(ECLSS:Environmental Control and Life Support System)と呼びます。

生命維持には大きく二つの柱があり、使用した水や飛行士の体から排出される水の再生と、呼気として排気される二酸化炭素(CO2)を処理する空気の再生です。ISSの日本実験棟「きぼう」では環境制御は実現していますが、生命維持はISS本体に依存しています。

日本の独自技術で従来より高度なシステムを新たに開発し、導入しようというのが今の取り組みです。

伊藤剛伊藤剛(いとうつよし)
有人宇宙技術部門有人宇宙技術センター技術領域主幹

──新しいシステムはどんな方向を目指しているのですか?

伊藤 現在ISSで運用されているのは、水や酸素を少しずつ地上から運搬・補給するオープンECLSSで、当面の課題は再生率を高めて補給量を減らすことです。将来的な究極の目標は必要な水や空気を再生によって完全に循環・供給するクローズドECLSSで、私たちの取り組みもこれを目指しています。

2018~19年頃までには地上レベルでの技術として完成させるべく、研究開発を進めています。

ISSISS内部のシミュレーション用再現画像 Photo by Getty Images

──開発中のシステムの技術的な特徴はどのような点でしょうか?

伊藤 水再生システムでの第一の特徴は、日本で開発した高温高圧電気分解方式です。

これは回収した尿に、250℃の高温と7メガパスカル(地表大気圧の約70倍)の高圧をかけたうえで特殊な電極で電気を通します。含まれている有機成分を分解して取りのぞき、飲用可能なレベルにまで浄化する技術です。

現在実証を進めているシステムでは、再生率85%以上という高効率と、従来の約4分の1のコンパクト化や消費電力約2分の1の省エネルギー性を実現しています。

フリーズドライでさらに高効率化

──活動空間も電力も貴重な宇宙では、小ささや消費電力の低さも重要ですね。

伊藤 さらにこのシステムは、消耗品がなくメンテナンスフリーである点も特徴です。

一種のフィルターであるイオン交換樹脂膜も併用していますが、この再生もシステム内で自己完結する処理方式としているんです。このシステムは2019年から軌道上での実証を予定しています。

──ここまできたポイントはどこにあるといえるでしょうか。