photo by iStock

日本のベンチャー最前線、アメリカと中国とはまだ「ここが違う」

大学発ベンチャーのキーマンが語る

トヨタの豊田章男社長もベンチャー企業に投資

日本の大学発ベンチャーでもっとも成功している東京大学で、東大発ベンチャーの支援に15年近くにわたって携わってきたのが、産学協創推進本部イノベーション推進部長の各務茂夫教授である。
前回は、なぜ東大発のベンチャー企業が数多く誕生するのか、その背景やベンチャーを生み出す仕組みを語ってもらった。今回は、日本の大企業とベンチャー企業やスタートアップとの新しい関係について、さらには成長著しい中国のベンチャー事情の最前線について語った。

日本の大企業のベンチャー企業に対する見方、考え方も、ここ2~3年で大きく変わりました。

トヨタ自動車やNTT、日立製作所などの大企業が、ベンチャー企業やスタートアップに出資するケースが増えているのです。「オープンイノベーション」が流行り言葉でなく、実際に中身が伴うようになってきているといっていいでしょう。

大企業のベンチャーとの関係は、以前ならばCSR(企業の社会的責任)の一環といった扱われ方で、ベンチャー企業やスタートアップを戦略的に位置付けるという意識はあまり高くありませんでした。しかし、いまはベンチャー企業とは対等の関係で、協業できなければ自分たちの死活問題にもなりかねない。そんな考え方が大企業の間に広がってきたと思います。

 

たとえば、武田薬品工業で社長、会長を歴任した長谷川閑史相談役は、いまやブロックバスター(従来の治療体系を覆すような圧倒的な薬効を持ち、極めて高いシェアやまったく新しい市場を生み出す、売上1000億円を超えるような新薬を指す)は、大学か大学発ベンチャーからしか生まれないといった話をしています。

トヨタは2016年に「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」という会社をシリコンバレーにつくりました。人工知能(AI)の研究開発を担う会社ですが、ベンチャー・キャピタル・ファンドを組んでいて、AIや自動運転技術関連のベンチャー企業に投資、あるいは買収を手掛けています。

トヨタの豊田章男社長は、アメリカのバブソン大学を卒業しています。この大学は起業家教育に特化した大学で、アントレプレナーシップの分野で世界的に高い評価を得ています。日本では地道にモノづくりに徹しているように見えるトヨタですが、グローバルでは着々と手を打っているのです。

photo by gettyimages

そういった動きが一部の大企業のなかに起きてきています。ただ、多くの企業はベンチャー企業と組むのはまだまだ難しいのではないかと感じています。

買収を例にあげてみればわかります。スーツにネクタイが当たり前の大企業に、Tシャツにジーンズの人たちが来たらどうしても違和感があります。企業文化や企業風土に大きな違いが生じてしまう。ベンチャー企業を買収してもうまくいかないことが依然として多いのです。