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所得水準、大学進学率、社会的地位まで…「23区格差」の残酷な実態

この格差が固定化されていいのか
治安が悪い、学力が低い、ヤンキーが多い……何かとマイナスイメージを持たれがちな足立区。ところが近年、東京23区で「定住率ナンバーワン」を誇るなど、その住みやすさから再評価が進んでいるという。『なぜか惹かれる足立区』(ワニブックス刊)の著者で、一般社団法人「東京23区研究所」所長の池田利道氏は、高収入、高学歴、高職位を「三高」とすれば、足立区は「三平のまち」だと表現する。データが表す残酷な真実と、その裏にある魅力について分析してもらった。

東京随一の「三平のまち」

世田谷や杉並、練馬など東京の西部と比べ都心への交通の便に優れる東部3区が、若いファミリー層から見放されようとしているのは、実際の距離は近くてもイメージとしての距離が遠いからにほかならない。東部3区は東京随一の「三平のまち」だ。

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バブルのころ、若い女性が男性に求める条件は、高収入、高学歴、高身長の「三高」であるとされた。その後時代が変わっていくに従って、女性が求める男性像は平均、平凡、平穏の「三平」に変わっていったという。しかし、世が再びバブルの様相を帯び始めた今日、女性の志向が「三高」に回帰しつつあるとの説もある。

ちなみに、お隣の中国での「三高」とは、高収入、高学歴、高職位を指すそうだ。ただし、対象は男性ではなく女性。敬遠される女性の3条件だというから意味は全く逆になる。

以下、日中混合の考えに立って、高収入、高学歴、高職位を「三高」の条件と考え、東部3区の「三平」の実態を改めて振り返ってみることにしよう。

まずは収入から。2016年の所得水準が23区で一番高いのは港区。1000万円を大きく超えている。誤解がないようにつけ加えておくが、これは世帯あたりではなく、1人あたりの数値である。

逆に低い方は、下から足立区、葛飾区、板橋区、江戸川区。港区と足立区では、3.3倍もの開きがある。東部3区の中では一番高い江戸川区でも、港区との差は3倍を超える(図表)。

足立区の最下位は、過去20年間ずっと続いている。葛飾区も同じ。江戸川区は、20年近く前(1997年)の18位からだんだん順位を下げ、2014年と15年が21位、16年には1つランクを上げたが、下位ランクにあることに変わりはない。上位の方も、1999年にそれまで1位だった千代田区と2位だった港区の順位が入れ替わったものの、3位はずっと渋谷区で、こちらも大きな変化はない。

変わっているのはトップとボトムの差だ。1997年には当時1位だった千代田区と足立区の差は2倍を下回っていた。差はなぜ広がったのだろうか。

過去20年間で所得水準が高くなった区が10区ある。1位の港区から9位の品川区までの9区と12位の江東区だ。江東区で所得水準が上昇したのは、豊洲地区のタワーマンション族が増えたためだと考えられる。

細かくいえば、各区の所得水準の動きには凹凸がある。後述する港区のように上位の区には上位の区なりの、下位の区には下位の区なりの変動がある。

東部3区についていえば、2011年~12年を底にして、近年わずかながらではあるが上昇傾向が続いている。しかし、大きなトレンドとしてみれば、同じ区内に豊洲地区という異なる特徴をもったエリアを抱える江東区を例外として、所得水準が高い区はますます収入が増え、逆に低い区はますます収入が減っている。

 

上が増え、下が減って差が広がっているのだから、これはもう構造的な格差の拡大というしかない。

高所得には高所得なりの悩みもあるが……

それにしても3倍の差は大きすぎる。実は高い方が異常なのだ。図表に示した数値は課税対象所得額であり、株や不動産などによる資産所得も含まれている。

過去10年間で、港区の所得水準が一番高かったのは2014年の1267万円、二番目が2008年の1127万円、一番低かったのが2011年の878万円。3年間で22%減った後、次の3年間で44%増と、ジェットコースターのような変動を見せた。

この背景には、その時々の経済情勢がある。2008年は秋にリーマンショックが起きた年。2011年はリーマンショックの影響から抜け出せないまま東日本大震災に襲われた年。2014年はアベノミクスへの期待が高まった年。港区の所得水準にはバブルな要素が上積みされている。

高所得区には高所得なりの悩みや課題があり、手放しで羨ましがってはいられない面もある。だが、そうはいっても、東京の所得格差は大きい。しかも強者と弱者の位置関係は固定され、格差はさらに拡大を進めている。そして、その底辺に東部3区があることは、やはり否定のしようがない。