〔PHOTO〕立木義浩
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自衛隊特殊部隊を創った男がタリスカーを愛する理由

タリスカー・ゴールデンアワー22回(前編)

提供:MHD

生まれながらのミリタリーマン伊藤祐靖さんとは、はじめて会ったその瞬間から、なぜか気が合った。若いころに海外の冒険小説を読み漁った影響かもしれないが、伊藤さんに“漢”を感じたのである。

そういう伊藤さんもわたしに何かを感じたようで、著作を熱心に読んでくれた。そしてまもなく、「男は徹底的にロマンティックな愚か者になれ」というドグマに感電し、“シマジ教”の信者になった。

特殊部隊の軍人というのは元来、山野を駆け巡って、自らかき集めた食料で腹を満たす訓練を受けているわけで、美食とはほど遠い世界にいる。着るものにしたって、いかに効率的に体温を下げるか、いかに体温を逃がさないかが問題であって、お洒落とはほど遠い。

伊藤さんは海上自衛隊を退官してから、幸か不幸か、それまでの人生の対極にあるシマジワールドを知り、美酒美食とお洒落の浪費に目覚めたという。この日は重厚な本物のピーコートを着て現れた。

彼はいまや、毎晩、タリスカースパイシーハイボールを愛飲するタリスカーラバーでもある。

(構成:島地勝彦、撮影:立木義浩)

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ボブ: 伊藤さん、初めまして。ボブと申します。本日はよろしくお願いいたします。それではまず、タリスカースパイシーハイボールで乾杯しましょう。スランジバー!

伊藤: スランジバー! いや~、美味しいなぁ。なんでかなぁ、雰囲気なのかなぁ。味がちがうんですよ。毎晩、同じタリスカースパイシーハイボールを飲んでいるのに。

ボブ: お酒はやっぱり、一緒に飲む相手によって全然、表情が変わります。今日の座談会は愉しくなりそうですね。

シマジ: 今日のために伊藤さんの『自衛隊失格』(新潮社)を改めて読み返してみましたが、伊藤さんが日体大を卒業してすぐ、海上自衛隊にまっすぐ入隊したのは、やっぱり独特な家庭環境がそうさせたのだと、思いましたね。

なんといっても筋金入りの軍国主義者のお婆さん“軍国ババア”と、陸軍中野学校出身のお父さんの影響が大きかったんじゃないですかね。戦後の平和な時代生まれだというのに、遺髪と遺書を同封して、玄関先で父親に手渡してから自衛隊に入った人間は、伊藤さんぐらいしかいなかったんじゃないですか。

伊藤: いや、いまでも1割ぐらいはいると思いますよ。うちの家庭環境が特殊だったという点は間違いありませんが(笑)。

シマジ: お父さんも、さも当然といった感じで遺書を受け取り、「ご苦労なことです」とつぶやいて軽く頭を下げたというところがいいですよね。

伊藤: あのときは父の他人行儀な態度に違和感を抱きましたが、後から考えてみると、あれは「お前は今日から私心を捨てる世界に行く。それなら、わしも親としての息子に対する私情を諦める」という覚悟の表れだったんだと思います。

シマジ: 脇からお母さんが「あんた、お父さんと握手をしてから行きなさいよ」というのは、一般人の母親の心情だと、わたしにもよくわかります。ところがお父さんは「わしには西洋人のような習慣はない」と言って奥に引っ込んでしまう。あれもなかなかの美学です。

そこに居合わせた“軍国ババア”がまた、名セリフを吐くんですよね。「女々しいことをするくらいなら死を選びなさい」と。

伊藤: そうなんです。自分自身、あの言葉には圧倒されました(笑)。

ヒノ: 伊藤さんは日体大を卒業後、高校の体育の先生に内定していたそうですね。

伊藤: はい。最終的に自衛隊に行くと決めたのは、結局のところ、“軍国ババア”の影響ですね。軍隊に行けば絶対に不完全燃焼はないと思ったんです。

立木: きっとその“軍国ババア”はいい顔をしているんだろうね。そういう日本人を撮りたいよ。伊藤さん、紹介してくれる。

伊藤: 立木先生、残念ながら祖母は10年以上前、94歳で大往生を遂げました。たしかに孫の目からみても毅然とした立派な顔をしていました。

立木: 残念!

ヒノ: 全国から体力自慢が集まってくるわけですから、日体大に入学するのも難関だったんじゃないですか?

伊藤: 自分は昔から飛び切り足が速かったので、日体大には陸上部の特待生として入学できました。実際、自分は高校から大学を卒業するまで、教科書を開いたことすらない“体育バカ”でした。

ただ、陸上競技を教えてくれた高校の教師は立派でした。当時はまだ、ひたすらウサギ跳びをしていれば甲子園に行ける、みたいな考え方が妄信されていた時代です。それなのに、その教師は、「この世では根性なんていう言葉では勝てない。科学的かつ合理的なトレーニングを、他人が出来ない量をこなした者だけが勝つんだ」と、スポーツの神髄を教えてくれたんです。

この考え方は、後々、海上自衛隊に入隊して、特殊部隊を作ったときにも役に立ちました。

ボブ: 伊藤さんに先ほど名刺をいただいたんですが、カッコいいですね。“Badman company”と書いてありました。

伊藤: companyというのは会社という意味ではなくて、ミリタリー・ユニットの中隊のことです。小隊がplatoonです。

ボブ: 大隊をbattalionといいます。

伊藤: そして連隊がregimentです。

ボブ: じつはぼくも海兵隊に入る準備までしていたんですよ。高校時代、ライフル射撃部のキャプテンだったので、猛烈に勧誘されました。ちょうど映画『フルメタル・ジャケット』が流行ったころで、君なら有能なスナイパーになれるとか、うちにくれば女の子にモテモテだよとか、とにかく猛アタックされました。もしも日本への留学が決まらなければ、海兵隊に入隊していたはずです。

立木: シマジ、ここで、「人生は恐ろしい冗談の連続である」って言わないのか。

シマジ: タッチャン、勘弁してくださいよ。いままさに言おうとしていたところだったのに。