ビル・ゲイツ大絶賛の書が私たちに投げかける「重要な問い」

私たちの見ている世界は本当に正しいか
上杉 周作 プロフィール

正解は「ゼロ」。

9ヵ国のうち、女性ひとりあたりの子供の数、すなわち出生率が平均「3以上」である国はひとつもない。

その証拠に、世界銀行の2016年のデータを紹介しよう(これが最新のデータ。9ヵ国中ほとんどで出生率は減少傾向なので、2019年現在の出生率はさらに低いと思われる)。

子供の数がもっとも少ないタイの出生率(1.48)は、日本の出生率とほぼ変わらない。3番目に少ないベトナムの出生率(1.95)は、沖縄県の出生率とほぼ変わらない

ランキングの真ん中にいるミャンマーの出生率(2.21)は、沖縄の宮古島の出生率とほぼ変わらない。最も出生率が高いフィリピンでは、避妊が禁止されているカトリック教徒が人口の大半を占めるが、出生率は3未満だ。

つまり、これから日本に労働者としてやってくる9ヵ国の人たちは、平均的に見て「子だくさん」ではない。もちろん日本より出生率は高いが、「3人も4人も子供をつくるのが当たり前」ではない。子供の数はだいたいふたりだ。沖縄の出生率と大差はない。

ひと昔前は違った。もうすぐ平成が終わるが、平成がはじまった1989年には、9ヵ国中「7ヵ国」で出生率が3を超えていた。当時、フィリピンとモンゴルでは出生率が4以上、カンボジアとネパールでは5以上だった。

平成の30年間で、これらの国では出生率が激減した。今から30年後には、9ヵ国のうちのほとんどで、出生率が2を切るだろう。タイの出生率は、30年間で2.18から1.48まで下がった。これから他の東南アジアの国で同じことが起きてもおかしくない。

ちなみに、このクイズをSNSで出題したところ、正解率は14%だった。「大半が出生率3以上」という、とんでもなく的外れな回答をした人は約半数にのぼった。

多くの人が見過ごす大事なデータ

移民の是非についてはこの記事では問わない。だが、先ほどのクイズに間違うようであれば、「移民は子だくさんだから、受け入れたら日本が乗っ取られてしまう」と主張しても、説得力に欠ける。

たしかに、移民が多数派を占める地域が増えるかもしれない。しかしデータを見る限り、それは移民が子だくさんだからではない。少なくとも、今回政府が受け入れ拡大を決めた国においては。

「単純に国ごとの出生率を見るだけでは不十分だ」というご指摘もあるだろう。それはごもっともだ。他に考慮すべきことを、手始めに4点紹介しよう。

 

第一に、タイは日本並みに出生率が低いが、フィリピンの出生率は日本の倍だ。だから、タイからの移民が多くなる場合と、フィリピンからの移民が多くなる場合では、話は変わってくる。

第二に、日本に来るような移民は教育水準が高いから、出生率が国の平均よりも低いかもしれない。

第三に、移民が子供だけでなく、兄弟を連れてこれるようになれば、その兄弟が生まれたころの出生率を見る必要がある。

第四に、移民が日本で子供をつくることになれば、子供の数は日本の出生率に近くなるだろう。

他に見るべき数字を挙げればキリがない。そもそも現在、家族帯同ができる特定技能「2号」を何人が取得するかさえも不透明だ。

とはいえ、現在の国ごとの出生率を見るだけでも、移民議論の出発点にはなる。出生率を知っておけば、「子だくさんなアジアの国から移民を受け入れたら…」という主張は、なんとなくおかしいとわかる。

出生率は、移民についての議論で見過ごされやすい。だが、恥をかかないためには知っておくべきデータのひとつだ。

このように、世の中について論じたり、ビジネスで競争を勝ち抜くには、「多くの人が見過ごす大事なデータ」があれば役に立つ。

では、どうすればそんなデータを探せるのか。