すべての死に至る病は「のど」から始まる

「体の門番」と呼ばれています
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それは「隠れ誤嚥」ではないですか

あなたも誤嚥している

朝起きると空咳が出たり、のどが渇いたりすることはある。でもそれは年のせいで、食事をしてもむせないし、痰も出ない。夜もぐっすりと寝ているつもりだ。だから、特にのどが弱っているとは思えない。

自分は健康だと信じて疑わない人に、知らず知らずのうちに忍び寄る恐ろしい症状がある。「隠れ誤嚥」だ。

ひとくちに「誤嚥」といっても、2種類のパターンがある。食べ物や飲み物をうまく飲み込めない、本人が自覚できる誤嚥を「顕性誤嚥」という。一方、気づかないうちに唾液や口内の食べかすが気管に入ってしまう誤嚥のことを「不顕性誤嚥」という。

自覚症状があり、周囲も異変に気付くことが多い顕性誤嚥よりも、静かに進行する不顕性誤嚥のほうが深刻な肺炎につながるリスクが高いのだ。

「隠れ誤嚥」がもっとも起こりやすいのは、睡眠中である。寝ているあいだは、気付かないうちに唾液や口の中に残っている食べかすが気管に入ってしまっても、咳などで排出しようとする「せき反射」が起こりづらいのが原因だ。

年齢に関係なく、就寝中にむせたり、咳が出て起きてしまう人がいるが、こうした場合はむしろ防御反応が正常に働いている証拠でもある。ところが年齢を重ねると、せき反射が起こらず、寝ているあいだずっと誤嚥が続いている状態になってしまう。

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こうして咳が長く続き、なんとなく風邪が治らないと思っていたら、気づかないうちに誤嚥性肺炎が進行していた、というのが「隠れ誤嚥」の怖さである。

統計上、肺炎で亡くなる人はやはり高齢者に多く、実に95%以上が65歳以上なのだ。

「誤嚥性肺炎は、寝ているあいだに鼻腔や咽頭にもともとある定着菌が気道に落ち込んだり、気道にいる菌が誤嚥を契機に活性化することで起こります。いちばん多いのは、もともと保菌していた肺炎球菌が活性化するものです。

65歳以上の人は、全員が睡眠中に誤嚥をしていると言っても過言ではありません。これは、睡眠中に意識レベルが低下することで、もともと低下しつつある嚥下機能がさらに落ち込むために起こります」(東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科教授の寺本信嗣氏)

 

日常生活に支障はなくても、年齢を重ねれば自分も「隠れ誤嚥」を起こしているかもしれないと疑うのが重要だ。大切なのは、「隠れ誤嚥」自体を防ぐのではなく、肺が細菌感染する体内環境をできるかぎり作らないようにすること。

加齢は、睡眠中の口内環境にも大きく影響する。人間は40代を過ぎると、唾液の分泌量が減って口内が乾きやすくなる。そうすると唾液内の雑菌がどんどん増えていくため、「隠れ誤嚥」で肺炎を引き起こす確率が上昇してしまう。

こうした状況を改善するためには、こまめに水分を摂り、口やのどの乾燥を防ぐ必要がある。

『フケ声がいやなら「声筋」を鍛えなさい』(晶文社)の著書がある、山王病院国際医療福祉大学東京ボイスセンター長の渡邊雄介氏は次のように語る。

「いまの時期は空気が乾燥しています。加齢とともに体内の水分保有量は減ってきますが、これはのども同じです。夏は脱水を意識して水分を摂りますが、より乾燥している冬に水分不足になっている人も多いのです。

のどが渇くと、声帯やのど全体の筋力も衰え、誤嚥性肺炎にかかる確率が上がってしまいます。機械に油を差す感覚だと思って、冬場こそ水分を補給するようにしてください」