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あなたの土地を狙う地面師たち「その恐ろしい手口」

気づいたときには、売られていた…

現代の東京で頻発している地面師事件。「手配師」「道具屋」「口座屋」、そしてそれを束ねる首謀者――。闇の詐欺集団は、他人の土地を売り払おうと蠢いている。森功氏がレポートする。

アパグループも騙された

濃いグレーのスーツをまとった被告人が、いつものように無表情で入廷した。身長175センチ前後の細身で、白髪交じりの短髪、ごま塩頭。ギョロリとした鋭い眼を尋問する検事に向けていた。

「では検察官の意見を述べます」

午後1時15分から始まった公判は1時間半ほど続いたあと、公判検事が立ちあがり、求刑にいたる根拠を説明し始めた。

「今回の事件は大きく分けてふたつあります。東京都港区赤坂の土地、それから東京都品川区五反田の土地をめぐる、いわゆる地面師詐欺。それに伴っておこなわれた文書偽造、不正な登記申請事件になります」

五反田の土地とは医療法人「青葉会」の所有地のことで、法人の理事長になりすまして詐取した事件。そしてもう一つの赤坂の土地が、大手ホテルチェーン「アパグループ」が騙された事件だ。

いわゆるアパ事件の主犯として逮捕、起訴された被告人が、宮田康徳(56歳)である。来る12月13日の判決を前にしたこの11月8日、宮田に対する検察側の論告求刑が東京地裁でおこなわれた。

宮田ら地面師一味は、医療法人「青葉会」とアパを騙した二つの事件に先立ち、東向島の3階建てビルの持ち主の贈与話をでっちあげた地面師事件を引き起こしている。

通称、東向島事件で、すでに懲役5年半の実刑が確定し、服役中の身でありながら、さらにアパと青葉会の二つの事件で裁かれようとしていた。論告求刑では、公判検事が宮田をこう厳しく断罪した。

「2件の被害総額は16億1240万円あまり、ときわめて多額であります。地面師事案でも稀に見る高額で甚大な被害が出ているわけですから、この点は量刑を決める上でとくに重視されなければいけません」

昨今、横行する地面師事件の中でも、とりわけアパ事件は大型の詐欺である。犯行は5年半前の'13年8月、詐欺の舞台は東京メトロ溜池山王駅から徒歩1分ほどのところにある駐車場だ。

宮田たち地面師一味は、都心の駐車場オーナー一族になりすまし、アパから12億6000万円もの売買代金を騙し取った。先の東向島事件などを合わせ、宮田らの犯した詐欺の被害総額は、実に22億円に上る。

この10月来、警視庁捜査2課が摘発に乗り出した被害額55億5000万円の積水ハウス事件に次ぐ大事件といえる。

おまけに実は、宮田らが引き起こした一連の事件は、積水ハウス事件の犯行グループと顔ぶれが妙に重なっている。地下水脈で複雑に絡み合う地面師ネットワークによって、犯行が遂行されているのである。