「期待値を超えるチーム」が必ずたどる、たった1つの成長法則があった!
2002年から国内外のサッカーを取材し、日本代表におけるチームビルディングをテーマとする最新作『アイム・ブルー』を上梓した木崎伸也氏が、ヴィッセル神戸や横浜F・マリノスで仕事をした経験をもつEコマースのプロフェッショナルで、『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則──『ジャイアントキリング』の流儀』の著者でもある仲山進也氏と緊急対談。
大好評第2弾は、本田圭佑カンボジア代表監督も実践している「チームづくり」の要諦が明かされます! それは、ビジネスにも活きる知恵だというのですが……!?
「サッカーとビジネスには共通点が多い」──どちらの業界でもよく言われることだ。
「個人」が強みを活かしながら「チーム」として結果を出すという共通の土台があり、いずれも「いかにチームビルディングをうまく進めるか」がカギを握っている。
では、両業界において、どんな会議(ミーティング)が行われ、どんな社長やリーダー(監督)が率いれば、“ジャイアントキリング”を引き起こせるのか?
『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則──『ジャイアントキリング』の流儀』の著者・仲山進也は、楽天大学の学長を務めるかたわら、Jリーグの複数のクラブではたらいた経験をもつ、日本きってのチームビルディングのプロだ。
日本代表の衝突と融合を描いた『アイム・ブルー』の著者で、現在はカンボジア代表でビデオアナリストを務める筆者(木崎)が話を聞いた。
木崎 僕は、スポーツライターとして16年間サッカーを取材してきたのですが、2018年10月、本田圭佑さんから突然、「“質問”はチームづくりに活きるので、カンボジア代表をサポートしてもらえませんか?」と頼まれ、チームの一員になることになりました。仲山さんは、取材記者をチームに入れることをどう思いますか?
仲山 木崎さんが本田さんにスカウトされたという記事を拝見して、すごくいいアイデアだと思いました。「記者の質問」に目をつける本田さんは、相当に面白い監督だな、と。
木崎 どういうことですか?
仲山 たとえば、チームミーティングの場で木崎さんが質問をしたとします。その場で、選手全員が同時に本田監督の答えを聞くことで、みんなの“視点”や“価値基準”をすり合わせるのに役立つ。木崎さんが風間八宏さんと共著で出された本では、“目を合わせる”という表現を使われていましたよね。これと同じで、チーム内で“視点”や“価値基準”が合うことで、劇的にチームビルディングが進んでいくんです。
同時に、「この監督は、こういう質問をされても怒らないんだ」といったリーダーの個性を、メンバー全員が確認・共有できます。さまざまな質問が繰り返されるたびに、チームの価値観としての“地雷”がどこにあるかもわかってくる。
木崎 “地雷のありか”を共有することのメリットは?
仲山 僕はよく、「ゴルフのOBライン」という説明の仕方をしています。OBラインがはっきりすることで、何をどこまでやっていいか、選手が自分たちで判断しやすくなる。
サッカーチームに限らず、会社や部署、グループなどのあらゆる組織に「よい質問者」がいるのはいいことなんですよ。本田さんは、それをおそらく本能的に知っている。だから、面白い監督になりそうだなと感じたんです。
木崎 カンボジア代表では、僕はまだ、本田監督と一対一のときに質問しているだけなんですね。ただ、確かに本田監督から「選手からもっと質問を引き出したいから、みんなの前で木崎さんに質問してもらおうかな」と言われたことがありました。
仲山 カンボジアがどうかはわからないですが、日本では「質問することで、理解力が低いと思われるのがイヤだ」と、質問を敬遠する傾向がありますよね。言い換えると、「わかったフリ」をしてしまう。
木崎 それって、質問を避けた本人にも、まわりのメンバーにももったいないことですよね。
仲山 はい。だから、僕は講座をするとき、質問タイムの冒頭にこんな話をします。
「いま説明したフレームワークについて、僕は話したいことが3日分くらいあるんですけど、みなさんの興味や問題意識がわからないので、どこから話せばお役に立てるかわからない。なので、質問がほしいです。いい“パス”をくれたら、いいボールを返しますので(笑)。そういう意味で、質問をデザインしてください」
質問をうまく使えるようになると、対話がよりスムーズに進むようになって、チームビルディングは超うまくいきます。
木崎 本田監督から冗談交じりに「質問しなかったら、チームにいる価値ないですからね」と言われ、あらゆる場面で質問を求められます。現時点では一対一のシチュエーションなのでブレインストーミングが目的だと思うのですが、今後はチームミーティングでも質問してみようと思います(笑)。
仲山 質問によって誰かの考えを引き出して、メンバー全員で共有できる状況をつくると、みんな物が言いやすくなる。その状態が、前編でご紹介した「心理的安全性」が担保されているということなんです。