韓国で『82年生まれ、キム・ジヨン』が大ヒットした社会的背景

日本とこんなにも状況が似ている
金 香清 プロフィール

しかし当時の女性の性的被害については40年近く経った今、やっと語られ始めたのである。#MeTooのムーブメントに乗ったものだ。

韓国でも日本でも社会運動の場において、「いまはほかにもっと大事な問題がある」といった「大義」の下に、女性の人権が後回しされるのは常である(韓国で従軍慰安婦問題の議論が活発になったのも、90年代に入ってからである。徴兵・徴用問題に比べるとずいぶんとタイムラグがある)。

 

現在の#MeTooムーブメントも、言論の自由から後退気味だった9年続いた保守政権後に発足した、左派政権への期待が大きいだろう。

国家を私物化した朴槿恵(パク・クネ)政権を市民の力で弾劾し、生まれたのが現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権だ。声を上げれば何かが変わるかもしれないという期待が、抑圧されてきた女性たちの背中を押したのだ。

(左)文在寅、(右)朴槿恵〔PHOTO〕gettyimages

ミソジニスト(女性嫌悪者)たちの反発

一方で"副作用"もある。フェミニズム的言説に対する、ミソジニスト(女性嫌悪者)たちの反発だ。

同小説も例外ではない。映画化が決まると、主演女優のチョン・ユミのSNSアカウントは、攻撃と支持のコメントで炎上した。大統領府の請願用掲示板に「映画化を阻止すべき」という要請を書く人もいた。

K-POPグループであるRed Velvetのメンバーが、同書を読んだと発言し、一部の男性ファンが彼女の写真を燃やす様子をSNSにアップするといったこともあった(この騒動直後に同作は、ネット書店の週間ランキングで再び1位についている)。

日本でもミソジニーの男性が、ネット書店のレビュー欄で「女性の妄想だ」と批判し、女性読者が「この反応こそが現実を物語っている」と反応している様子が見られる。

女性の差別問題について、急激な変化を遂げる韓国で生まれた小説『82年生まれ、キム・ジヨン』。男女平等などの民主主義がある意味では韓国より進んでいたはずの日本で、ヒットし、共感される様子は、意外なことにも見えるが、必然的なことだったのかもしれない。

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