中国は先進国か、発展途上国か…正月の北京で見つけたひとつの答え

この国は「21世紀の実験国家」なのか
近藤 大介 プロフィール

40年の中国の進歩

ようやく長蛇の列が、国家博物館の手荷物検査のところまで辿り着いた。実は地下鉄の出口、列の入口に次ぐ3度目の検査で、今度は本格的にカバンや着ている服などをまさぐられ、ペンと目薬を没収されてしまった。ペンは武器になり、液体は爆発物になるリスクがあるのだとか。

建物の正門をくぐると、「偉大的変革」(偉大な変革)という黄色の5文字が巨大な紅いパネルに書かれていて、度肝を抜く。

すっかり並び疲れた「老百姓」たちは、5文字をバックにして、記念撮影に余念がない。ちなみにその左右の標語は、「習近平同志を核心とする党中央の周囲に緊密に団結しよう」(左側)、「新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を奪取しよう」(右側)となっていた。

巨大な博物館の館内には、多くの「老百姓」が入っていた。大別すると、第一に、昔を懐かしむ老夫婦や元職場の退職組、第二に、子供に教えようとする教育熱心な親子連れ、第三に、共産党の教えに比較的忠実な国有企業などの若手社員やカップル、という人々が多いように見受けられた。

展示の内容は、国家博物館のHPでも見られるので、興味のある方は開けてみてほしい。

http://www.chnmuseum.cn/Portals/0/web/zt/20181113ggkf40/

http://ggkf40.cctv.com/vtour/tour.shtml

 

展示は、第一展区「偉大な変革」、第二展区「壮美な章篇」、第三展区「重要な選択」、第四展区「歴史の巨変」、第五展区「大国の気象」、第六展区「未来に向かって」となっていた。順に、鄧小平時代、江沢民時代、胡錦濤時代、習近平時代の中国の発展を、多くの文物や資料、統計などをもとに振り返る展示だ。

私は、どこぞやの地方の団体の後ろにくっつき、女性の案内員のマイクの声を聞きながら回った。GDP225倍、貿易額1350倍、都市部住民の収入106倍……。たしかに、大したものだ。

40年前からの家庭内の様子や、着ていた服なども展示してあったが、本当に中国人の生活は、別の国の人のようになった。これを見ると、まあいまは多少、不景気だが、昔に較べればマシだわと思えてしまう。

ただ一つ気になったのは、後半からは習近平政権が、いかに改革開放政策を継承して飛躍的な発展を遂げさせたかに力点が置かれていたことだった。そもそも習近平主席のパネル写真だけが巨大なのだ。

つまり一通り見終わると、40年の中国の進歩とともに、習近平政権の正統性をも再認識するような展示になっているのだ。

国内の経済発展ばかりか、宇宙開発、海底開発、軍事増強……改革開放41年目の2019年、中国は未知なる船出に出ようとしている。それがアメリカとの「新冷戦」なのか、2大国共栄共存の時代なのかは、まだ見通せない。

少なくとも、中国は先進国でもなく発展途上国でもなく、独特の「21世紀の実験国家」のような気がする。

1月7日、8日に米中交渉が北京で再開しましたが、2019年の米中関係を予測したものです。ご高覧下さい!


【今週の東アジア関連推薦新刊図書】

日中七〇年 戦争と反日・友好
著者=工藤俊一
(さくら舎、税込み1,944円)

私が北京大学に留学していた1990年代半ば、当時70代だった工藤先生は同校で日本語教師をされていて、宿舎に遊びに行ったものだ。あれから二十数年を経て、御年97歳! 80年にわたる中国との貴重な体験を上梓された。いまから80年前の1939年4月19日朝に上海港に入った時からのことが綴られた、この上なく貴重な体験史だ。年末年始に何度も読み返しては唸った。この執念!