中国は先進国か、発展途上国か…正月の北京で見つけたひとつの答え

この国は「21世紀の実験国家」なのか
近藤 大介 プロフィール

習近平政権の景気浮揚策

たしかに、2018年の中国経済は、見るも悲惨な状況だった。

上海総合指数(平均株価)は24%下落。11月の新規輸出実績は前年同期比47%。1月から11月の固定資産投資は5.9%と、過去20年で最低。消費の動向を示す新車販売台数も、1月から11月で前年同期比マイナス1.7%の2542万台で、通年でも1992年以来のマイナスとなった模様だ。

消費動向を示すもう一つの指標であるマンション契約件数も、首都・北京でさえ前年比マイナス4.27%の4万2994軒だった。中国経済を牽引する「三頭馬車」と呼ばれる輸出・投資・消費とも振るわないのである。

こうした事態を受けて、中国政府は元日から、個人所得税の大型減税を始めた。家賃、養育費、教育費、介護費、病気代について、所得税から一部控除するというものだ。さらに、月収3500元(約5万5200円)から始まっていた個人所得税の徴収を、月収5000元(約7万9000円)からに引き上げるという減免措置を、予定より3ヵ月前倒しして、昨年10月1日から実施している(個人所得税法実施条例25条)。

中国では、改革開放初期の1980年に、個人所得税法を定めた。だが一般に所得税が始まったのは、1994年に個人所得税法実施条例が定まってからで、当時は月収850元(約1万3400円)以上が対象だった。

以後、増税はあっても減税というのは、ほとんど前例がない。それだけに習近平政権は、「庶民のための減税措置」を、大々的にアピールしている。

実際はどうなのかと、眼前の銀行員に聞いてみた。

「まあ、ないよりはマシという程度ですかね。例えば、私が住むマンションの大家は、『家賃控除を申請するなら、その分家賃を上げる』と、早くも言い出しています(中国の賃貸住宅は一年毎の契約が主流)。借主が家賃控除を申請すると、大家の税金負担が増えるシステムだからです」

 

習近平政権はまた、企業に対する減税も視野に入れており、「GDPの1%の大型減税」への期待が高まっている。例えば、現行の法人税は税率が25%で、中国政府は年3.5兆元(約55兆円)の税収を得ているが、これを仮に20%に減税したら、7000億元(約11兆円)の景気浮揚策になるという。

さらに期待がかかるのが、増値税(日本の消費税に相当)の減税だ。現行では、普通物品などに17%、農産品や水、天然ガスなどに11%、金融・サービス品などに6%の増値税が賦課されている。だが、これらを引き下げることによって、企業収益の回復が見込まれる。

だが、そもそも論で言うなら、社会主義というのは、「税金のない国」だったはずだ。それが改革開放政策を進めるにつれ、1993年に憲法を改正し、「国家は社会主義市場経済を実行する」(第15条)と定めた。そこから中国は、資本主義国を凌駕する税金大国と化していったのだ。