中国は先進国か、発展途上国か…正月の北京で見つけたひとつの答え

この国は「21世紀の実験国家」なのか
近藤 大介 プロフィール

あるエリート銀行員の嘆き

極寒の中、私も「老百姓」に混じって、約1時間半も長蛇の列に並んだ。

その間、彼らの様子を観察していたが、以前に較べて、着ているものが格段によくなった。一昔前まで、近くに寄ると、ひと冬洗わないオーバーの臭いが、必ずプーンと鼻を突いてきたものだが、いまは3割くらいまで臭う確率が減った。

それどころか、いま北京の若者たちの間で最も流行しているのは、なんと、カナダグースである。

「北京の原宿」こと三里屯に、カナダグースの旗艦店が、12月29日にオープンした。本来なら、15日にオープンし、カナダの観光大臣も訪中予定だったが、例の華為技術(ファーウェイ)孟晩舟副会長逮捕事件で中国とカナダの関係が悪化したため、延期したのだ(店側は工事のためと説明している)。

カナダグースの旗艦店

私もこの店を訪れてみたが、「人山人海」(黒山の人だかり)とは、まさにこのことである。いまの中国では、服はネット通販で買うという習慣が定着しているので、三里屯のファッションブランドは、ユニクロも含めて苦戦を強いられているのだが、カナダグースだけは例外だった。一番人気のオーバージャケットは、8200元(約13万円)もするというのに、飛ぶように売れていた。

「九〇後」(ジウリンホウ=1990年代生まれ)や「九五後」(ジウウーホウ=1995年~1999年生まれ)と呼ばれる若者たちにとっては、華為問題などどうでもよいのだ。親の世代は、「熱心にカネを貯める世代」だったが、彼らは、「熱心にカネを使う世代」なのである。

 

国家博物館の脇で長蛇の列を作っているうちに、前方に立つ若い地元カップルと、すっかり打ち解けた。青年はエリート銀行員(25歳)、女性は大学院生(23歳)だという。彼にいまの景気について聞くと、眉を顰めて答えた。

「景気は悪いなんていうものではありません。私の支店では、取引している約130社のうち、約50社が昨年、経営危機に陥りました。われわれは、中小零細企業に貸し渋りや貸し剥がしをしていると非難されますが、経営危機に陥りそうな企業に、どうして融資しますか?

いま銀行員の間で流行っている言葉があります。『2019年の中国経済は、金融危機後の10年で最悪の年になるだろう。かつ、今後10年で最良の年になるだろう』」

彼はそう言って、青年に似合わぬシニカルな薄笑いを浮かべた。やはり米国との貿易戦争が、中国経済に暗い影を落としているのである。

この銀行員の青年は、もう一つ、銀行員の間で出回っているという「2019年に守るべき10ヵ条」を教えてくれた。

1. 現金、美金(アメリカドル)、黄金の「三金」を大事にしろ
2. 辞職するな、創業するな、投資するな
3. 日常の消費に回帰し、大きな買い物をするな
4. 身体を鍛えて、病気にならないようにしろ
5. スマホのサラ金には手を出すな
6. 感情を抑制し、配偶者や職場の上司とケンカするな
7. 人混みには近寄るな
8. マイホームを買うな、売るな
9. 株に手を出すな
10. 外食を控えて自炊せよ

「要は、これからやってくる長期不況時代に備えて、守りに入れということです。私の親や先輩の時代は、右肩上がりしか知らないイケイケの時代を謳歌してきましたが、もうそんな華やかな時代は終わったということです」(同銀行員)