「超高額初セリ」のウラで進行しているマグロの危機的状況

3.3億円には理由がある
嶺 竜一 プロフィール

漁師も儲からない…?

漁師にとっても大した稼ぎにはならないようだ。巻き網漁のマグロは人気がなく、大漁の時などはどんなに安くても売れ残るそうだ。

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売れ残ったマグロはシーチキンやネギトロ、養殖の餌にしかならない。そもそも境港でマグロの巻き網漁が増えたのは1980年代以降で、イワシやアジ、サバの巻き網漁の船団が、獲物が居なくなる真夏の時期に、マグロの捕獲も始めたのだという。

生まれたマグロの98%を一度も産卵したことのない幼魚で捕獲し、さらに抱卵した親までも乱獲していては、資源が減少するのは明らかである。世界では資源保護の観点から、あらゆる魚が未成魚での捕獲には規制がかかかっている。なぜ日本ではそんな漁業が放置されているのか。

その原因は、日本の漁業のベースとなっている「オリンピック方式(ダービー方式ともいう)」である。

 

オリンピック方式とは日本全体で漁獲可能総量(TAC)を設定し、よーいドンで解禁。制限量に達した時点でストップするやり方だ。そのため各漁師は我先にと「早い者勝ち」で漁をする。

漁獲トン数の上限が決まっているので、旬でなくても幼魚であっても、漁業権のある目の前の漁場に来た魚を獲ることになる。資源保護政策が遅れている日本には、これまでそれを規制する法律がなかった。

では、海外はどうか。現在、先進国でオリンピック方式を採用している国はほぼない。多くが1970〜80年代にオリンピック方式を廃止し、IQ方式またはITQ方式を採用している。

IQ方式とは個々の漁師ごとに漁獲高を割り当てる方式で、ITQ方式とはさらにその漁獲高を売買や賃貸借できるようにした方式だ。ノルウェー、アイスランド、アメリカ、ニュージーランドなど先進的な漁業国の多くで採用されている。

IQ・ITQ方式が採用されれば、漁師ごとの漁獲高は匹数ベースで管理されるため、漁師はなるべく大きな個体を、最も高く売れる旬の時期に獲ろうとすることになる。

ノルウェーでは70年代、オリンピック方式によって資源が激減するという今の日本と同じ問題を抱えたが、78年のITQ方式導入より、以前の漁獲量まで回復したという。ノルウェーの漁師の平均収入は何倍にも増え、若者の人気職種になっているらしい。

日本はこれから規制できるのか?

太平洋クロマグロの国際的な漁獲枠については、26の国・地域が参加する「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」でルールを決めてきた。2014年の委員会では日本の30kg未満の未成魚と、30kg以上の成魚に対してそれぞれに総量規制をかけた。

その総量に対して、日本は2015年から「自主管理」という形で都道府県ごとに漁獲枠(トン数ベース)を導入した。

ただし都道府県ごとに漁獲量は配分されたが、漁業者ごとに配分はされておらず、都道府県内ごとでは未だにオリンピック方式での早い者勝ち漁業が行われている。規制枠を早々と超えてしまうケースも散見され、成果は出ているとは言えまい。

国際自然保護連合(IUCN)は2014年、絶滅の恐れがある野生生物を指定するリストで、太平洋クロマグロを「軽度の懸念」から「絶滅危惧」に引き上げた。

太平洋クロマグロ、大西洋クロマグロを合わせ、世界のクロマグロの72%が、世界人口の2%に満たない日本で消費されている。インド洋などで獲れるミナミマグロ(インドマグロ)は98%を日本が消費している。

外国漁船が違法操業でマグロを獲っているから、日本のマグロが危ないと主張する人も多いが、まずは自分の国が何をするべきなのか、考えたほうがいい。