「超高額初セリ」のウラで進行しているマグロの危機的状況

3.3億円には理由がある
嶺 竜一 プロフィール

一網打尽

乱獲の漁場は、鳥取県、島根県、山口県にかけての日本海沖である。この海域でマグロ漁をしている港は幾つかあるが、その最大の拠点と言われるのが鳥取県の境港である。

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日本近海には本マグロの産卵場が2海域あり、1つは沖縄本島から宮古島、八重山諸島にかけての海域。もう1つが隠岐諸島~能登半島の沖合だ。

本マグロはある程度の大きさになると主に日本列島に沿って回遊を始める。初夏に産卵を終えた親マグロは、日本海側と太平洋側から、津軽海峡を目指す。太平洋側の群れの一部は日本を離れ、太平洋を横断してメキシコまで旅をする。

本マグロが晩秋から冬に津軽海峡に集結するのは、この海域にスルメイカやサンマが集まるからだ。旨味の強いスルメイカとサンマをたっぷりと食べたマグロは旨味と香り、脂を蓄えて最高の味になる。だから大間のマグロは最高峰なのだそうだ。

1月ごろになるとマグロは津軽海峡を後にし、再び日本海や太平洋を南下する。そして再び初夏の産卵期に沖縄と日本海の産卵場に集まり、産卵を始める。弾丸のように泳ぐマグロも、その時だけは動きが止まる。その産卵期のマグロを狙って、巻き網漁で乱獲するのが、境港のマグロ船団だ。

巻き網漁は、一艘の船で網を仕掛けるのではなく、船団で漁をする。探索船がレーダーで群れを見つけ、2艘の船が網の端を引いて、長さ1km以上、深さ100メートル以上にもなる巨大な網で魚の群れを囲みこみ、一網打尽にする。

その網には、産卵直前の抱卵した本マグロの親魚と、前年に生まれた0歳から1歳のメジマグロが大量に入るのである。マグロの卵はなんと養殖の餌になるそうだ。

大間などの釣り漁(1本釣りや延縄釣り)で捕獲された大型のマグロは、船上ですぐに血抜き処理がされる。しかし巻き網漁ではそうした処理はできない。いろんな魚が混ざったまま運搬船に載せるか、網のまま引いて港に戻る。暴れて苦しんで窒息死したマグロは血が身に飛び、身質も落ちる。

これがスーパーに並ぶメジマグロの正体だ。