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1本3000円!超高額の「ガトーショコラ」が飛ぶように売れる理由

常識をくつがえす「価格戦略」
氏家 健治 プロフィール

値上げで「客筋」を変える

プライスを見直すことで利益が大幅にアップしたのは私の店ばかりではありません。

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値上げをすることで客筋が変わり、はては大変な栄誉に浴することができたフレンチレストランの例を紹介しましょう。

その店ではご主人がシェフ、奥様が接客を担当されています。シェフは非常に高度な技術を持つ上質なレストランです。

しかし、10年ほど前まではそんなに有名なお店ではありませんでした。昼にはランチタイムを設け、価格は2800円、3800円、5000円の3種類。高級店としてはお得感のある金額設定でしょう。

お客様の大半は近隣のOLさんたち。彼女たちが頼むのはほぼ一番安い2800円のランチでした。ランチは利幅を抑えて価格を設定しているので、正直、ワインなどアルコールを頼んでいただかないとなかなか利益が出ません。

ところがOLさんが頼むのは水。すぐ隣には5000円のランチでワインを楽しんでいるお客様がいらっしゃいますが、水しか頼まないからと、OLさんを接客で差別することはできません。それは絶対にあってはならないことです。

なんとか利益を上げたいと、シェフはランチタイムの開始時間を従来の11時半から12時半に遅らせました。OLさんの来店を遠回しに避けるためです。

しかし、それでもOLさんは時間を調整して来店される。ありがたいといえばありがたいことですが、どうしても利益が安定しないので、ついにこのお店はランチの最低価格を5000円に変更しました。

 

これには大きな変化がありました。OLさんの来店はがくんと減り、お客様の数は減少しました。そのかわりに、来店されるのはワインとシェフ自慢の料理をゆっくりと楽しみたいという方ばかりになりました。これこそシェフが求めていた客層です。

「自分たちが目指していたようにやろう」「想定していたお客様だけにターゲットを絞ろう」という決断がその後、何をもたらしたと思われますか?

その年にミシュランガイドの調査員がやってきて、このレストランは見事一つ星を獲得しました。そしていまも星を獲り続け、11年連続で一つ星に輝いています。フランス料理で星を獲るのは極めてハードルが高いのであっぱれとしか言いようがありません。実力があったからこその受賞です。

とはいえ、覚悟を決めてアクションを起こしたから。つまり本質を貫いたからではないでしょうか。もし値上げをしていなければミシュランガイドの調査員が来ても、星の獲得はなかったかもしれません。

店を知ってほしいからといってエントリーレベルの安価な価格を設定するレストランはよくありますが(かつての私の店のランチもそうでした)、その判断がターゲットではない層を招き、経営不振にあえいでいるケースをたくさん見かけます。

最初からOLさん向けの店であればそれでいい。しかし、彼らの店はそうでなかった。自分たちの立ち位置を明確にしようと価格を設定し直したことで、店が本来備えていた輝きを取り戻したのです。

このお店の例に見るように、商品力を磨いて、価値に見合っているとあなたが考える価格に堂々と設定して、利益をがっちりと確保しましょう。