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1本3000円!超高額の「ガトーショコラ」が飛ぶように売れる理由

常識をくつがえす「価格戦略」
氏家 健治 プロフィール

「2500円」ではなぜダメか

2014~2016年のこと、製菓業界はバター不足という緊急事態に陥りました。

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死活問題だったバター不足を私はなんとか乗り切れることができましたが、それもプライスを見直していたからです。

当時、バターを確保するために私がとったのは、極めてアナログな方法でした。業者向けではない一般のネット通販でプレミアム価格で販売されているバターを購入し、材料として用いたのです。

ほかにも紀ノ国屋や百貨店など、品質の良いバターを小売りしている店を足で回っては買い求めました。通常購入している価格よりは当然高くなりますが、背に腹は代えられません。

材料費が上がれば原価率が上がります。品薄の中、プレミアムがついて販売されているバターを使ったことで原価率は大幅にアップしました。

当然ながら利益が圧迫されましたが、私はこのときすでにガトーショコラの価格を3000円に値上げしていました。じゅうぶんな利益が見込める価格設定です。だからこそ利益率の大幅ダウンにも持ちこたえられたのです。

もし、値上げをしていなかったらと思うとゾッとします。仕方なく生産本数を少なくしてなんとかしのいでいたかもしれませんが、利益が出ず、大きな経営危機に直面したかもしれません。私の店を救った命綱は値上げ後の3000円という価格でした。

東日本大震災も経験しましたが、自分の力ではいかんともしがたい外的な環境変化を乗り切るためにも、企業や店はじゅうぶんな利益を確保しておく必要があります。

特に日本は災害の多い国です。外的な環境変化に持ちこたえられる体質をふだんから作っておくことは経営者の使命です。

 

じゅうぶんな利益を確保するからこそ危機的な状況にも対処できるし、次の一手を打つこともできる。プライスを検討する際には、業界の相場や同業者や競合店のプライスではなく、何よりも自社・自店の利益に敏感であるべきです。

1本13センチという小ぶりなガトーショコラでありながら3000円。この価格は明らかに常識外れです。

普通では考えられない設定ですが、だからこそ、「どれだけ美味しいのか」「そんなに美味しいのか」「本当に美味しいのか」という興味や関心を呼び起こしました。チョコレート好きであればあるほど、一度は試してみなくてはという衝動に駆られるようです。

加えて、商品は1種類のガトーショコラだけ。

ケンズカフェ東京のガトーショコラが高級ブランドとして広く認知されたのは、味はもちろんのこと「3000円の菓子1種類のみ」というシンプルさも功を奏したのだと考えています。

絞り込んだ「プロダクト×プライス」の掛け算が大きな効果を生んだのです。

ラインナップを決め、プライスを設定する際には、中途半端な考えではいけません。思い切りが必要です。ガトーショコラも2500円という中途半端な価格であったら、ここまでの反響はなかったはずです。3000円という価格だからこそ、メディアからの取材依頼が増え、露出度が大幅にアップしました。

もうちょっとお客様が買いやすいように、あるいは少しでも安く見せたいからといって「2800円」や「2980円」という価格にしていたら、高級感は演出できなかったはずです。